The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…誰が、ルレイアに連絡する?」

「…」

「…」

誰が、望んで魔王に謁見したいだろうか。

怖い。

マフィアの幹部が三人揃って怖がるって、一体どういう状況だよ。

「…アリューシャは絶対嫌だから。頼んだよ、アイ公」

「アリューシャ…君って人は…」

そう言うだろうとは思ってたけどさ。

本当に言ったよ。

「私…私が頑張るわ、アイズ。なんとかルレイアを怒らせないように…私が頑張るわ」

この健気なシュノを見習って欲しい。

しかし、こんな大役をシュノだけに押し付ける訳にはいかない。

「…よし、死なば諸共だ…。全員で連絡しよう」

シュノは、こくこく、と頷いたが。

これに異を唱えたのは、アリューシャであった。

「何でアリューシャまでっ?」

「アリューシャ…」

君は…そう言うだろうと思っていたけどね。

「良いかい、アリューシャ…。私は今まで…君がルレイアに襲われかけてピンチに陥ったとき、何度となく君を助けてあげたね」

「ぐぬっ…」

「別にそのことを恩着せがましく言うつもりはない。でも…死地に向かおうとする親友を前に、薄情にも自分だけ逃げようと言うなら…私は今後、君との付き合い方を考えさせてもらうよ」

「脅迫じゃねぇか!」

何とでも言うと良い。

私だって、あの魔王に立ち向かうのは死ぬほど恐ろしいのだから。

これでもアリューシャが逃げると言うなら、私は今後、彼がルレイアに貞操を脅かされようとも…見なかったことにする。

しかし…アリューシャはそこまで薄情ではなかった。

「分かったよ!やるよ、一緒にやるよ!」

「ありがとう、アリューシャ。君は私の親友だよ」

赤信号だって、一人で渡ると怖いけど、三人なら怖くない。

それと同じ。魔王に立ち向かうのだって、一人だと怖いけど…三人なら…。

「…」

…三人でも、怖いな。

三千人くらいいても、やっぱり怖いと思う。

「…じゃあ、電話するよ」

「うん…」

覚悟を決めろ。アイズレンシア・ルーレヴァンツァ。

今こそ、勇気を見せるとき。

私は携帯をスピーカーモードにしてから、ルレイアに電話を入れた。

出なかったら良いんだけどなと思っていたが。

『はーい。もしもし~?ルレイアですよー』

まだ何も知らないルレイアが、朗らかな声音で電話に出た。

この明るい声が、一分後にはどんなに冷たくなっているかと思うと…今すぐ電話を切りたくなるが。

そうはいかない。
< 120 / 791 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop