The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルアリス

──────…ルレイア殿の一撃は、俺の胸に重く突き刺さった。

…最初から最後まで、彼の言う通りだったな。

いや…俺の仲間達とも、散々議論を交わしはしたけれど。

あれだけはっきりと現実を突きつけられてしまうと…どうしても。

「…俺の考えが甘かったってことなんだろうな」

ルレイア殿が去った後、俺はぽつりとそう呟いた。

良くも悪くもあの人は、綺麗事を言わない。

だからこそ…俺よりずっと現実を見ている。

「ルアリス殿…。あの人…ルレイア殿は、ああいう人なんだ。そんなに気にすることは…」

俺が落ち込んでいるのを見て、ルーシッド殿が慰めようとしてくれた。

しかし。

「大丈夫です。全て、彼の言う通りですから…」

俺は今まで、綺麗事しか言ってこなかった。彼の言う現実からは目を背けていた。

…あれだけ散々馬鹿にされたら、嫌でも現実を直視させられるよな。

彼の言う通りだ。憲兵局が講和を受け入れるはずはない。素直に講和を受け入れてくれる連中なら、そもそも革命なんて起こさない。

結局は、俺が戦いたくないのを先延ばしにしているだけのことだ。

革命後の憲兵局員の処遇についてもそう。

俺が彼らを「殺したくない」と思うのは、自分の手を汚すのが嫌だからに過ぎないのだ。

でも俺が彼らを生かしたとしても、「悪者は全員処刑」が当たり前の箱庭帝国国民は、悪となった元憲兵局員を許しはしない。

俺が甘かったのだ。

一滴も血を流さない革命なんて有り得ない。

なら、俺が覚悟を決めなくてはならないのだ。

未来の箱庭帝国国民の為に。

「…考えを改めます。綺麗事だけじゃ人は救えない…」

「…ルアリス殿、俺は思うのだが」

ずっと沈黙を守っていたフランベルジュ殿が、俺にそっと言った。

「確かに、綺麗事だけじゃ人は救えないかもしれない。でも…人が人を救う最初のきっかけは、大抵が綺麗事だと思うぞ」

「…フランベルジュ殿…」

「貴殿は貴殿だ。ルレイア殿ではない。それを…忘れないでいてくれ」

「…ありがとうございます」

少し…元気が出た。

ルレイア殿の言ったことは、全て事実。

それを踏まえて…俺は俺のやり方で、祖国を救う。

その為には、まず。

「…ルティス帝国の帝都に行きます。ルーシッド殿…手配を頼めますか」

「はい」

この国で、俺は牙を磨かなくては。