The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
アイズレンシア達が帰り、ほっと一息ついて。

さて、少し休むかな…と思っていた、昼下がり。

残念ながら、俺は休ませてもらえなかった。

「る~るし~っ!」

「うわっ…びっくりした」

目をきらきらさせたルレイアが、両手一杯の赤い薔薇の花束を持ってやって来た。

アリューシャと言い、ルレイアと言い、来るなら静かに来いよ。

「ルルシー!お見舞いに来ましたよ~。花束を持って!」

「あ、あぁ…」

一抱えもあるでっかい薔薇の花束を差し出すルレイア。

ルレイアから薔薇の花をもらいたい女は、このルティス帝国にごまんといるだろうに。

何で、俺がもらってるんだ?

「お前…花を持ってくるのは良いけど、何で薔薇の花なんだ…?」

お見舞いに持ってくるような花じゃないだろ。そんな真っ赤なの。

しかも、匂いも結構きついし。

もっとこう…淡い色のガーベラとかさぁ…。

「え?だって恋人へのプレゼントと言えば…赤い薔薇でしょ?」

「…」

「あっ、ルルシーはやっぱり青い薔薇の方が好きですか?俺も青の方が好きなんですけどね、でも青い薔薇ってなかなか入手が難しくて…」

「…良いよ、何でも…」

もう何でも良いや。

ルレイアが元気そうで何よりだよ。

「それより、お前。俺の見舞いに来るような暇はあるのか?革命軍とは…」

「それはそれ、これはこれですよ。世の中には優先順位というものがあってですね?ルルシーをお見舞いに来なきゃいけないんです」

俺の見舞い>革命だとでも言うのか。

『青薔薇解放戦線』に申し訳なくてならない。

まぁ…でも。

「…俺もお前が入院してた頃は、ほとんど毎日見舞いに行ってたもんな…」

それも、二年間ずっと。

ぽろりと口に出してから、俺は余計なことを言った、と思った。

あの日々のことを…ルレイアに思い出させるなんて。

「ルレイア…ごめん」

「?別に良いですよ…。ルルシー、毎日来てたんですね。俺、覚えてないですけど」

きょとん、とするルレイア。

あの頃のルレイアなら…覚えてないのも無理はない。

「きっとあの頃ルルシーは、今の俺みたいに、毎日心配だったんでしょうね」

「そりゃ、心配だったよ…」

今の俺なんか目じゃないくらい、あの頃のお前は痛々しかったからな。

見ていられなかった。

「それに比べると、お前は随分ましだぞ。ちゃんと会話は出来るし…いつ頃治るかの目処が立ってるんだからな」

「確かに」

あの頃のルレイアは、会話もほとんど成立しないし、いつ治るのかも分からなかった。

そもそも、治るかどうかさえ分からなかったのだ。

それに比べれば、俺は随分ましだ。

「じゃあ俺も、ルルシーが治るまで毎日来ますね」

「別に毎日来なくても良いよ…お前、今忙しいんだろ?」

革命の準備やら何やらで。

俺が手伝ってやれないのがもどかしい。

「でも俺はルルシーに毎日会いたいんです」

…あ、そう。

「だから早く治ってくださいね、ルルシー」

…あの頃とは、すっかり立場が逆転、だな。

全く、俺の気も知らずに、お前って奴は。

「昨日も言ったけどな…。俺のいない間に、無茶するんじゃないぞ、ルレイア」

「はーい」

…ちゃんと分かってんだろうな?こいつは。

やっぱり俺が早く治って、ルレイアを監督してやらなくては。
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