The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
はっとして顔を上げると…そこには、私の思っていた通りの人物がいた。

聞き間違えるはずがない。彼女は私の…私の親友だった人なのだから。

「ど…して、あなたが…」

私の声は震えていた。顔もきっと…青ざめていたことだろう。

だって彼女が、ここにいるってことは。

「生きておったか、フューシャ…。何よりじゃ。皆、お前が死んだものと思って諦めていたが…」

彼女は心底嬉しそうな顔で、私に歩み寄ってきた。

「生きていて良かった。元気じゃったか?」

「…ミルミル…」

彼女の名前は、ミルミル・ミーミル・リフュニエット。

箱庭帝国で…私の一番の友達だった人。

箱庭帝国出身のその人が…ここ、ルティス帝国にいる。

それも、帝都に。

その理由は…最早言うまでもなかった。

「二年前、そなたからの連絡がいきなり途絶えて…。よもや帝国騎士団に捕まったのではないかと思っておったが…無事だったんじゃな。本当に良かった」

「…」

「しかし、何故連絡をしなかったのじゃ?病気か…怪我でもしたか?」

私は、何も答えられなかった。

終わりだ、と思った。

今までの…ツケが回ってきたのだと。

仲間を裏切り、何より愛している人を欺き続けた罪が、今ここで…私に牙を剥いたのだ。

「…フューシャ?どうした」

「ミルミル…私…」

何を言えるだろう。私はあなたを裏切っていたと言えば良いのか?

ミルミル達が、祖国で今にも殺されるかという恐怖に怯えていたその頃、私は安全なこの国で、愛する人に守られて、幸せに暮らしていました、と?

どの面をさげて…そんなことが言えるのか。

でも、それが事実なのだ。

私は彼女達を裏切って、ルヴィアさんさえ欺いて、自分だけ幸せになろうとしていた。

それがどれほど罪深いことか、分かっていた癖に。

「…フューシャ、そなた…その腕飾りは何じゃ?」

「!」

私は咄嗟に、左手につけていたブレスレットを覆い隠した。

ルヴィアさんが、私へのクリスマスプレゼントとしてくれたものだった。

国籍もなく、身分も偽ってルティス帝国に忍び込んでいるはずの私が買えるほど、安いものではない。

それなのに何故、私がそんなものを持っているのか。

「…よもやそなた…男がいるのか」

「…」

ミルミルは、露骨に顔をしかめた。

私は彼女の目を見ることが出来なくて、俯いてしまった。
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