The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
その姿を見たとき、私は呆気に取られてしまった。

ルヴィアさんの…そんな姿を、見たことがなかったのだ。

怒気と殺気を滲ませた声なんて、聞いたこともなかった。

そもそも私は、一度として彼に暴力を振るわれたことはないし、怒鳴りつけられたことも、汚い言葉で罵られたこともなかった。

いつも優しくて、穏やかで、本当にマフィアなのかと疑いたくなるほどだった。

そんなルヴィアさんが…ここまで怒りをあらわにしているなんて。

ルヴィアさんは、ナイフを持つ暗殺者の手を乱暴に捻り、壁に押し付けた。

ぐきっ、と嫌な音がして、暗殺者が呻き声をあげた。

「所属を言え。貴様…憲兵局の秘密部隊とやらか?」

「ぐっ…!は、離せ…」

「言いたくないなら良い。生きたまま生皮を剥げば、少しは喋りたくなるだろう」

ルヴィアさんの冷たい声は、横で聞いていただけの私でさえ怯えてしまうほどだった。

そうだ…この暗殺者。憲兵局の…。

私の祖国…同郷の民なのか。

「あ…『青薔薇連合会』め…!貴様らが、貴様らが首を突っ込んでこなければ…!我が国の秩序が…!」

「知ったことか」

ルヴィアさんは、吐き捨てるようにそう言った。

「戦争をすると言うなら、『青薔薇連合会』が相手になってやる。…貴様らが敵う相手だと思うなよ」

侮辱された暗殺者が、瞳を怒りに染めた瞬間。

ルヴィアさんは、暗殺者の首の裏を殴って、一瞬にして気絶させた。

非常に手慣れた動きだった。

床に崩れ落ちた暗殺者になど目もくれず、ルヴィアさんは私を見た。

酷く鬼気迫った顔をしていた。

何と言って良いのか分からなくて、私は視線をさまよわせた。
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