The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「俺は別に…フューニャが『青薔薇解放戦線』のメンバーだったことなんて、どうでも良いんだよ」

この様子を見たところ…俺を騙して利用する為に、俺に近づいた訳じゃないんだろうしな。

「そんな…!でも…私、あなたに黙って…隠して…」

「黙っておきたいことや、隠しておきたいことなんて…誰にでもあるだろ?」

俺にだってある。

多分、マフィアにいる人間にはほとんど全員。

「表社会に生きてる人間だったら、騙されてたって怒るだろうな。でも…俺はマフィアだぞ。生粋の裏社会の人間なんだ…。そんな俺に、正義だの倫理だの語る資格はない」

仲間を裏切って、自分だけ助かる、だって?

悪いけどな、そんなことは…裏社会では、日常茶飯事だ。

何も珍しいことじゃないし、そうしなきゃ生きられなかったんだとしたら、責められるようなことではない。

それを責めるのは、生まれたときから恵まれてきた…平和な世界で生きてきた人間だ。

「それにな、フューニャ…。幸せになりたいって望むことは、何にも間違っちゃいない。お前がそういう選択をしてくれたからこそ…俺もお前と会って、幸せになれたんだ。だから俺はフューニャに…ありがとうと言わなきゃならない」

「…!」

綺麗事なら、誰でもいくらでも言える。

目の前に自分が幸せになれる道があるなら…それを選ぶのが人間というものだろう。

俺だってそうする。

ましてや…フューニャは今まで、祖国で辛い目に遭ってきたのだから。

だからフューニャは、何も間違ってはいない。

「心配するな。俺はお前を軽蔑したりはしない…。よく言ってくれたな。愛してるよ、フューニャ。何があっても…俺がお前を守るからな」

「…ルヴィアさん…」

俺は、当たり前のことを言ったに過ぎない。

それなのにフューニャは、ぽろぽろと涙を溢しながら、俺にすがりついた。

そんなに…泣くようなことでもないだろうに。

「フューニャ…。泣かなくても良いだろう?」

「だって…だって、私…あなたに捨てられると…」

「誰が捨てるんだよ…。例え百億円もらったって捨てないよ」

むしろ捨てられるのは俺の方だろう。俺がフューニャを捨てるなんてことは絶対に有り得ない。

だが…フューニャがもし、俺の傍から離れたいと言うなら。

俺も…考えなくてはならない。

「フューニャ…。『青薔薇連合会』は『青薔薇解放戦線』に協力して、憲兵局と戦おうとしている。お前は…『青薔薇解放戦線』に戻りたいか?」

「…」

「戻りたいなら…俺は止めない。本当は止めたいけど…でも、止めないよ」

それは、フューニャが決めることだ。

彼女の祖国の為の戦いなのだから。

だが俺は…フューニャを行かせたくはなかった。死ぬほど行かせたくなかった。

彼女が危険な場所に自ら足を運ぶなんて…気が狂いそうなほど嫌だった。

行かないでくれ、と言いたかった。

すると。

「…私…あなたの傍にいたいです」

「フューニャ…」

フューニャは、震える声でそう言った。

「戦うとか、戦わないとか、どっちでも良いです。生きて、あなたと一緒にいたいです…。それは…駄目ですか?」

…そうか。

良かった。心からそう思った。

「…分かった。なら…そうしよう」

「ルヴィアさん…?」

「心配するな、フューニャ。俺が守ってやる。お前だけは…必ず守るから」

フューニャを、戦火に巻き込む訳にはいかない。

だとしたら…俺に出来ることはただ一つだ。



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