The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
…その日、俺は自宅マンションのエレベーターに乗り込み、エレベーター内の壁に貼り付けられた鏡で、全身を確認した。

今日は、煙草は吸ってない。

酒も飲んでないから、酔っ払ってもいない。

同僚の女性とも、何もなかった。

更に、右手に持った紙袋。

この中に入っているのは、ホールケーキである。

しかも、ただのケーキではない。

帝都に一軒しかない、超有名店のケーキだ。

アシスファルト産の稀少な砂糖のみを使用した、非常に高価なものである。

完全予約制、数量限定のこのケーキ、実は来年の夏辺りまで、既に予約で一杯なのだそうだが。

マフィアのツテと権力で、なんとか予約を一枠空けてもらい、そこにねじ込んだ次第である。

高級ケーキなだけに、普通のケーキ屋で買うケーキとは値段も桁違いであった。

何故、俺がこんな高級ケーキを、わざわざ苦労して予約してまで購入したのか。

俺が、無類のケーキ好きだから?

違う。

可愛い妻に、プレゼントする為である。
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