The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「ルアリスさんは、どんなデザインが好みですかね~」

「…」

ルレイアは、鼻唄混じりにルアリスの服を物色していた。

ルアリスは、内心はらはらしていたに違いない。

頼むからまともなものを。まともなものを選んでくれ…!というルアリスの心の声が聞こえてくる。

…可哀想に。

気の毒だが、この店に入ってきた時点で、ここに彼の思う、まともな服は存在しない。

全部ルレイア仕様だ。

「ルアリスさん、いつも冴えない地味~な服ばっかりですからね~。少しは見映えの良い服着た方が良いですよね」

…酷い言われようだ。

ルアリス…お前、怒っても良いと思うぞ。

怒るに怒れない相手なんだけど。

「…あ、あの、ルレイア殿…。俺、これが…」

起死回生のルアリス。彼は自分の執事を見習って、変なものを勧められる前に比較的ましなものを選ぼうとした。

しかし。

「あっ、これとか似合いそうですね」

…遅かったか。

遅かったようだぞ、ルアリス…。

ルレイアがルアリスに選んだのは、いかにもルレイアの好きそうな、足首くらいまであるロングコート。

当然、黒一色。

「あ、あ、あの…」

とてもじゃないけどそんなものは着られない、と思ったのか…ルアリスは必死にルレイアに意見しようとした。

だが、それを聞くルレイアではない。

「中に合わせるのはこの黒シャツが良いですね。…ん?でも、こっちのちょっとシンプルめのシャツでもアリですね」

「!」

ちょっとシンプルめ、と聞いてルアリスが反応した。

是非とも…そっちの、ちょっとシンプルめの方にして欲しいところだ。

「あの、ルレイア殿。俺はシンプルめの方が…」

ここぞとばかりにルレイアに意見しようとしたルアリス。しかし。

ここで水を差したのは、さっきから一緒に後ろで見守っていた店長さんだった。

「そちらの商品、以前ルレイア様も買われてましたね」

「え…そうでしたっけ」

…何だって?

ルアリスが何としてもゴリ押そうとした、ちょっとシンプルめの黒シャツ…ルレイアも持ってるのか?

「ルレイア…お前がシンプルな服を買うのは珍しいな」

いや、シンプルと言っても、この店の中では、って話だから。当社比って奴。

「あぁ、思い出しました。そういや俺、これと一緒に、かなり派手なジャケット買ったんですよ。だからインナーはちょっとシンプルめにしようと思って」

なんだ、そういうことだったか。

ルレイアが素直にシンプルな服装をするはずがないと思った。

大体、ルレイアがそんな普通の格好してるところ、見たことないしな。

「ルアリスさんとお揃いはさすがにナシですね。ルルシーとなら何でもお揃いにしたいですけど、あなたは無理です」

「…」

ルレイアは、冷たい目でルアリスを見た。

…ルアリスが可哀想で仕方がない。

一杯奢ってやりたい。

「じゃ、やっぱりさっきの、派手な方にしましょう。こっちは俺とお揃いじゃないですよね?」

「はい。そちらはルレイア様も買われてないです」

「分かりました。じゃあやっぱりこれで」

「…」

あぁ…ルアリス。

ルレイアなんかと関わってしまったが為に、こんなことに。

「うふふ。良い買い物すると気持ち良いですね~。皆さん、今日買った服…ちゃんと着てくださいね?」

「…」

飄々としてるヴァルタ、平然としているヴィニアスとユーレイリーはさておき。

ラシュナ、セトナ、ルアリスの三人は、真顔で無言だった。

そして俺も、他人事ではいられないのが悲しいところ。

…本当に着るの?これ。
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