The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
sideアドルファス
─────…こちらは、王宮。
これから週に一度の、帝国騎士団隊長会議が行われるところである。
会議室に向かう途中の廊下で、俺は六番隊のリーヴァに出くわした。
「…あ」
「あ…」
お互い、しばし無言で見つめ合う。
…なんか、あれだよな。
俺達がこうやって、廊下で出くわすときって…毎回ろくなことになってない気がする。
以前の…バレンタインのときしかり。
今日は何事もなく、世間話でもしながら早いところ目的地に着きたい。
そう思っていたのに。
「あぁ、お前達…もう来てたのか」
そこに、俺達の疫病神、オルタンスが合流してしまった。
お前はどうしてこう、嫌なタイミングで鉢合わせするんだ。
いや、それより。そんなことよりも。
「…っ!?」
「何だお前!?」
リーヴァも俺も、驚きのあまり変な声を出してしまった。
「…?」
きょとん、と首を傾げるオルタンス。やめろ気持ち悪い。
前々から、いきなり突拍子もないことをする馬鹿だとは思っていたが。
今日はまた、これは一体何なんだ。
「顔に何かついてるか?」
「顔じゃなくて服だよ!何だそれは!?」
オルタンスの着ているもの。
それは、帝国騎士団の制服である。
帝国騎士なんだから当然だろうと言われればその通りだが、でもそうじゃないのだ。
オルタンスの着ている制服は、俺達と同じ白の制服ではない。
デザインはそのままで、色だけは真っ黒になっていた。
帝国騎士の制服、漆黒バージョン、爆誕。
一体何がどうなって、そんなことになったのか。
インクを溢したにしては盛大過ぎるぞ。
「ルレイアの伝言、あれ本気にしたのかよ!?」
「あぁ…。物は試しと思ってな、自分のぶんだけ、特別に発注してみた」
会議では却下されたからな。
自分だけでもやってみたってのか。
「仕立て屋に頼むとき、三回くらい『本当に黒で良いんですね?』って確認された」
そりゃそうだろうよ。
帝国騎士の制服が黒なんて、聞いたことがない。
「それに黒を着たら、ルレイアみたいにモテるかもしれないと思ってな」
「…ルレイアにしかモテないんじゃねぇの?」
「そうか。それは良いな。俺はルレイアのことが好きだからな」
「…」
何度も言うがな、こいつの「好き」は恋愛的な意味じゃないぞ。
オルタンスの言うことをいちいち真に受けてると、痛い目を見るぞ。
「どうだろう。リーヴァ、似合うか?」
「は、はぁ…その…非常に個性的で…良いんじゃないでしょうか…」
リーヴァも可哀想に。必死にオルタンスをフォローして。
でもリーヴァ、それ全然フォローになってないぞ。
「良かったら、二人も黒の制服を発注してみないか」
絶対嫌だね。
「…ってかそれ、規則違反なんじゃねぇの?」
制服の色を勝手に変えるなんてさ。
「俺もそう思って調べてみたんだが、規則には『規定の制服を着用すること』とは書いてあったが、その制服の色については言及されていなかった」
限りなくグレーゾーンじゃねぇか。
ってかアウトだろ。
「それにこれ…汚れが目立たなくて良いぞ」
「…もう黙ってろよお前…」
機能性をアピールしてんじゃねぇ。
…あぁ、もう頭が痛くなってきた。
よし。見なかったことにしよう。
ちなみにその後の隊長会議、俺もリーヴァも何も言わなかったが、他の隊長達も何も言わなかった。
まるでオルタンスの制服が黒くなっていることなど気づいていないかのように、平然と振る舞っていた。
多分、皆突っ込むチャンスに困ってたんだと思う。
ドッキリか何かだと思ってたんじゃないか。
コントかよ。
ただ、ルーシッドだけは、オルタンスの格好を見た途端、軽く噴き出していた。
あいつは素直だ。
これから週に一度の、帝国騎士団隊長会議が行われるところである。
会議室に向かう途中の廊下で、俺は六番隊のリーヴァに出くわした。
「…あ」
「あ…」
お互い、しばし無言で見つめ合う。
…なんか、あれだよな。
俺達がこうやって、廊下で出くわすときって…毎回ろくなことになってない気がする。
以前の…バレンタインのときしかり。
今日は何事もなく、世間話でもしながら早いところ目的地に着きたい。
そう思っていたのに。
「あぁ、お前達…もう来てたのか」
そこに、俺達の疫病神、オルタンスが合流してしまった。
お前はどうしてこう、嫌なタイミングで鉢合わせするんだ。
いや、それより。そんなことよりも。
「…っ!?」
「何だお前!?」
リーヴァも俺も、驚きのあまり変な声を出してしまった。
「…?」
きょとん、と首を傾げるオルタンス。やめろ気持ち悪い。
前々から、いきなり突拍子もないことをする馬鹿だとは思っていたが。
今日はまた、これは一体何なんだ。
「顔に何かついてるか?」
「顔じゃなくて服だよ!何だそれは!?」
オルタンスの着ているもの。
それは、帝国騎士団の制服である。
帝国騎士なんだから当然だろうと言われればその通りだが、でもそうじゃないのだ。
オルタンスの着ている制服は、俺達と同じ白の制服ではない。
デザインはそのままで、色だけは真っ黒になっていた。
帝国騎士の制服、漆黒バージョン、爆誕。
一体何がどうなって、そんなことになったのか。
インクを溢したにしては盛大過ぎるぞ。
「ルレイアの伝言、あれ本気にしたのかよ!?」
「あぁ…。物は試しと思ってな、自分のぶんだけ、特別に発注してみた」
会議では却下されたからな。
自分だけでもやってみたってのか。
「仕立て屋に頼むとき、三回くらい『本当に黒で良いんですね?』って確認された」
そりゃそうだろうよ。
帝国騎士の制服が黒なんて、聞いたことがない。
「それに黒を着たら、ルレイアみたいにモテるかもしれないと思ってな」
「…ルレイアにしかモテないんじゃねぇの?」
「そうか。それは良いな。俺はルレイアのことが好きだからな」
「…」
何度も言うがな、こいつの「好き」は恋愛的な意味じゃないぞ。
オルタンスの言うことをいちいち真に受けてると、痛い目を見るぞ。
「どうだろう。リーヴァ、似合うか?」
「は、はぁ…その…非常に個性的で…良いんじゃないでしょうか…」
リーヴァも可哀想に。必死にオルタンスをフォローして。
でもリーヴァ、それ全然フォローになってないぞ。
「良かったら、二人も黒の制服を発注してみないか」
絶対嫌だね。
「…ってかそれ、規則違反なんじゃねぇの?」
制服の色を勝手に変えるなんてさ。
「俺もそう思って調べてみたんだが、規則には『規定の制服を着用すること』とは書いてあったが、その制服の色については言及されていなかった」
限りなくグレーゾーンじゃねぇか。
ってかアウトだろ。
「それにこれ…汚れが目立たなくて良いぞ」
「…もう黙ってろよお前…」
機能性をアピールしてんじゃねぇ。
…あぁ、もう頭が痛くなってきた。
よし。見なかったことにしよう。
ちなみにその後の隊長会議、俺もリーヴァも何も言わなかったが、他の隊長達も何も言わなかった。
まるでオルタンスの制服が黒くなっていることなど気づいていないかのように、平然と振る舞っていた。
多分、皆突っ込むチャンスに困ってたんだと思う。
ドッキリか何かだと思ってたんじゃないか。
コントかよ。
ただ、ルーシッドだけは、オルタンスの格好を見た途端、軽く噴き出していた。
あいつは素直だ。