The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
ルーシッド殿も気づいているのだろうが、彼も俺には何も言わない。

でも彼の場合、何も言わないでいてくれる理由はきっと…言うと、俺に悪いから…だと思う。

ルレイア殿の場合は…単に、俺達がどれほど腑抜けていようと、どうでも良いからなのだろう。

そう…俺達は、現状…腑抜けている、と言われても言い返す言葉がなかった。




「…」

俺は厳しい目で、訓練の様子を眺めた。

今日はルーシッド殿もルレイア殿もいない。

だから…それだけに、言いたいことを好きなように言える。

「…酷いもんだな、我が軍は」

「…ヴァルタ…」

そこに、ヴァルタと、それから俺の執事であるユーレイリーがやって来た。

長い付き合いになる仲間達の前でなら、本音も言えるというものだ。

俺が言う前に…ヴァルタが言ってくれたけどな。

「…そうだな。俺も言い返す言葉がないよ」

「…こう言うのもなんだが、これが私の仲間だと思うと…泣けてくるな」

「…」

相変わらず…ヴァルタは辛辣だな。

それに。

「…ユーレイリー、大丈夫か?」

珍しく、ユーレイリーは酷く不機嫌そうな顔になっていた。

ユーレイリーが不機嫌になるくらいなのだから、状況は相当良くないな。

「いえ…済みません。私も少々…不甲斐なく思ったもので」

「そうか」

不甲斐ない…か。確かにそうかもしれない。

でもこれは…ある意味で、当然のことなのだ。

彼らが悪い訳ではないのだ。

悪いとしたら…それは、彼らを上手くまとめられない、俺なのだ。

また自分の肩にずっしりと、重たいものが乗せられたような気がした。

…今更だな、それは。

今更言っても仕方ない。こうなることは…予測出来ていなければならなかった。

俺も、仲間達も…「今このとき」を生きるのに精一杯で、それより先のことは見えていなかったのだ。

「…どうするつもりだ?ルアリス…。性根を叩き直してやらないと、使い物にならんだろう」

ヴァルタは一切の容赦なく、俺にそう進言した。

ヴァルタの言うことはもっとも。

俺も、そろそろ…何とかしなくてはいけないと思っていたところだ。

でも、その前に。

「…分かってる。でも…まずは、セトナ様と話してみる」

「…彼女は多分、まだ気づいてないぞ」

「だからこそだよ」

そろそろ…現実を受け入れなければならない頃だ。

皆。

「ついてきてくれるか、ユーレイリー」

「かしこまりました」

俺は残りの訓練をヴァルタに任せ、ユーレイリーを伴って、訓練場を後にした。

セトナ様に、会いに行く為に。
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