The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
帝国騎士団が用意してくれた、帝立ホテル。
そこが、現在俺達『青薔薇解放戦線』がねぐらにしている基地だった。
ルーシッド殿曰く、帝都に数ある帝立ホテルの一つに過ぎないとのことだったが。
俺にとってそこは、まるで王族の御殿のように見えていた。
俺だけじゃない。革命軍の面々にとっては皆そうだ。
こんな大きな、そして豪華なホテルは…祖国には存在しなかった。
憲兵局の本部だって、建物は大きかったけど…でも内装は簡素なものだった。
父のツテで、何度か入ったことがある。
それなのにルティス帝国には、こんなホテルが他にもいくつもあるらしい。
これよりもっと豪華なものだってあるそうだ。
この国は…俺達にとっては、あまりにも豊か過ぎる。
それが、全ての問題になっているのだ。
俺はユーレイリーと共に、セトナ様のいるホテルの最上階に上がった。
「ユーレイリー…もうここまでで良い。ありがとう」
ここから先は、俺が一人で行く。
「坊っちゃん…。大丈夫ですか?」
「心配ないよ」
俺が、しっかりしなければならないのだ。
俺がこの革命軍の、リーダーなのだから。
「…かしこまりました。では…失礼します」
「あぁ」
ユーレイリーが去ってから、俺はセトナ様の部屋の呼び出し鈴を押した。
「セトナ様…俺です。お話があります」
起きていると思うが…入れてもらえるだろうか。
すると。
部屋の鍵が、かちゃり、と開いた。
「ルアリスさん…。どうしました?」
「済みません、セトナ様…少し耳に入れたいことがあります」
「…分かりました。どうぞ」
セトナ様は、快く迎え入れてくれた。
何かを察したような表情だったから…朧気ながら、彼女ももう気づいているのかもしれない。
「飲み物でも淹れましょう」
「あ…それなら、俺が」
彼女にそんなことはさせられないと、俺は自ら立ち上がりかけたのだが。
「あなたは今お客様なのですから、私が淹れるのは当然です」
にこりとしてそう言われると…大人しく座って待っていることしか出来なかった。
ものの数分で、セトナ様は香ばしい芳香を漂わせるティーカップを二つ、持ってきた。
精々ホテルのアメニティだというのに…随分と高級感溢れる香りだ。
一口啜ると、これまた味わい深い濃厚な紅茶の味が口一杯に広がった。
…最近は、もうこれが当たり前になってきたな。
「この国は良いですね…。たった数分で、こんな美味しいお茶を淹れられるのですから」
セトナ様も、紅茶を一口啜って、そう言った。
彼女は、スイートルームの大きな窓から、外を眺めていた。
スイートルームだけに、大層見晴らしも良かった。
夜になったら、きっと素晴らしい夜景を見られることだろう。
「ルティス帝国は、本当に豊かな国ですね…」
「…俺も、そう思います」
だからこそ、俺達はここに来た。
ここを拠点にして、憂える祖国を救おうと思った。
その思いは…今も変わっていない。
しかし。
この国は…この国は、俺達が思っていたよりずっと豊かで…住み心地が良くて…恵まれていた。
それが、問題なのだ。
「…その豊かさが、今…仇になっているのです、セトナ様」
「…」
彼女は驚きもせず、俺の顔をじっと見つめた。
そこが、現在俺達『青薔薇解放戦線』がねぐらにしている基地だった。
ルーシッド殿曰く、帝都に数ある帝立ホテルの一つに過ぎないとのことだったが。
俺にとってそこは、まるで王族の御殿のように見えていた。
俺だけじゃない。革命軍の面々にとっては皆そうだ。
こんな大きな、そして豪華なホテルは…祖国には存在しなかった。
憲兵局の本部だって、建物は大きかったけど…でも内装は簡素なものだった。
父のツテで、何度か入ったことがある。
それなのにルティス帝国には、こんなホテルが他にもいくつもあるらしい。
これよりもっと豪華なものだってあるそうだ。
この国は…俺達にとっては、あまりにも豊か過ぎる。
それが、全ての問題になっているのだ。
俺はユーレイリーと共に、セトナ様のいるホテルの最上階に上がった。
「ユーレイリー…もうここまでで良い。ありがとう」
ここから先は、俺が一人で行く。
「坊っちゃん…。大丈夫ですか?」
「心配ないよ」
俺が、しっかりしなければならないのだ。
俺がこの革命軍の、リーダーなのだから。
「…かしこまりました。では…失礼します」
「あぁ」
ユーレイリーが去ってから、俺はセトナ様の部屋の呼び出し鈴を押した。
「セトナ様…俺です。お話があります」
起きていると思うが…入れてもらえるだろうか。
すると。
部屋の鍵が、かちゃり、と開いた。
「ルアリスさん…。どうしました?」
「済みません、セトナ様…少し耳に入れたいことがあります」
「…分かりました。どうぞ」
セトナ様は、快く迎え入れてくれた。
何かを察したような表情だったから…朧気ながら、彼女ももう気づいているのかもしれない。
「飲み物でも淹れましょう」
「あ…それなら、俺が」
彼女にそんなことはさせられないと、俺は自ら立ち上がりかけたのだが。
「あなたは今お客様なのですから、私が淹れるのは当然です」
にこりとしてそう言われると…大人しく座って待っていることしか出来なかった。
ものの数分で、セトナ様は香ばしい芳香を漂わせるティーカップを二つ、持ってきた。
精々ホテルのアメニティだというのに…随分と高級感溢れる香りだ。
一口啜ると、これまた味わい深い濃厚な紅茶の味が口一杯に広がった。
…最近は、もうこれが当たり前になってきたな。
「この国は良いですね…。たった数分で、こんな美味しいお茶を淹れられるのですから」
セトナ様も、紅茶を一口啜って、そう言った。
彼女は、スイートルームの大きな窓から、外を眺めていた。
スイートルームだけに、大層見晴らしも良かった。
夜になったら、きっと素晴らしい夜景を見られることだろう。
「ルティス帝国は、本当に豊かな国ですね…」
「…俺も、そう思います」
だからこそ、俺達はここに来た。
ここを拠点にして、憂える祖国を救おうと思った。
その思いは…今も変わっていない。
しかし。
この国は…この国は、俺達が思っていたよりずっと豊かで…住み心地が良くて…恵まれていた。
それが、問題なのだ。
「…その豊かさが、今…仇になっているのです、セトナ様」
「…」
彼女は驚きもせず、俺の顔をじっと見つめた。