The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルレイア

─────…ルルシーと、スイーツデートをした後。

『青薔薇連合会』本部にて。

「あ、ルル公とルレ公だ。お帰り~」

「ルレイア…ルルシーも、お帰りなさい」

「お帰り、二人共。『青薔薇解放戦線』の訓練の様子はどうだった?」

アリューシャ、シュノさん、アイズレンシアの順番で、彼らは俺達に挨拶してくれた。

『解放戦線』の訓練…ね。

「ただいま、皆さん。…『青薔薇解放戦線』は、相変わらずですねぇ」

相変わらず…使い物にならない。

むしろ、段々悪化していっている。

「帝国騎士団の考えた訓練やってんでしょ?ちっとは強くなったんでね?」

「残念ながら、全く進展なし…むしろ後退してますねぇ」

俺がそう答えると、アリューシャは首を傾げた。

「ふぇ?何で?」

「訓練を真面目にしてないの?」

と、シュノさん。

そうそう。その通り。

「まぁ…無理ないだろうね」

そして、アイズは…俺が言うまでもなく、『青薔薇解放戦線』が陥っている状況について、察したようだった。

さすがアイズだ。

「何で無理ないの?」

やっぱり分からないらしく、首を傾げるアリューシャ。

そうだな、アリューシャに分かりやすく教えるには…なんて言葉で表したら良いだろうか。

あぁ、そうだ。良い言葉がある。

「奴ら、平和ボケしてるんですよ」

「平和ボケ…?」

この言葉をおいて他にない。

奴らは今、平和ボケしてしまっているのだ。

奴らが真面目に訓練しないのは、そのせいだ。

「平和ボケってどういうことだよ」

言葉が端的過ぎていまいちピンと来ていないらしいアリューシャの為に、アイズが分かりやすく解説してくれた。

「アリューシャ…。私達のルティス帝国はね、箱庭帝国出身の『解放戦線』にとっては、平和過ぎるんだよ。祖国と違って、命を脅かされることはない。食べ物に困ることもない。怪我や病気をすれば治療を受けられる…。彼らにとってルティス帝国は、天国も同然なんだよ」

「!」

そう言われて、アリューシャも気づいたようだ。

生まれたときからルティス帝国の豊かさが当たり前の俺達には、イメージしにくいことかもしれないが。

箱庭帝国出身の彼らにとってこの国は、アイズの言う通り、天国だ。

生活には全く困らない。必要なものは全て、帝国騎士団や『青薔薇連合会』が持ってきてくれる。

帝国騎士団と俺達に守られているから、憲兵局に怯えることもない。

やることと言えば、毎日ほんの数時間ほど訓練をするだけ。

それだけすれば、あとは帝立ホテルの一室で、飽食三昧でだらだらしていられる。

そんな暮らしを続けていたら、誰が箱庭帝国に帰りたいと思う?

誰が革命なんて、命が脅かされるようなことをしようと思う?

彼らにとっては、命を危険に晒して憲兵局と戦うことよりも。

現状の毎日をずっと続けることの方が、遥かに楽で、そして幸せなのだ。

だからこそ、『青薔薇解放戦線』の兵士達は、真面目に訓練をしなくなっている。

武器の扱い方もろくに覚えようもせず、だらだらと時間が過ぎるのを待っている。

少しでも訓練期間を長くし、ルティス帝国に養われる日々を長引かせたいから。

ルアリスが気づいているのかどうかは知らないが、それが今の『青薔薇解放戦線』の実態なのだ。
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