The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
ルレイア殿のもとから帰ってきたその日の午後。
俺は、『青薔薇解放戦線』の仲間達を、いつもの訓練施設に集めた。
普段こんなことは滅多にしないから、彼らの前に立つのは緊張した。
でも、今は緊張している場合ではないのだ。
「坊っちゃん…大丈夫ですか」
俺が酷く緊張していることに気づいてか、ユーレイリーが声をかけてくれた。
「大丈夫だよ」
この期に及んで、緊張するのでやめます、なんて情けないことは言えないからな。
俺は一つ深呼吸をして、仲間達の前に立った。
「皆…わざわざ集まってくれてありがとう。今日は…俺から皆に、話したいことがある」
出来るだけ高圧的にならないように、声のトーンに気を付けた。
上から目線で話すリーダーなんて、憲兵局だけで充分だ。
俺は、ああはなりたくない。
ルレイア殿が何と言おうと…俺は、仲間達と対等の立場でありたかった。
「話したいことっていうのは…他でもない、俺と、それから皆の…これからの行く末のことだ」
目の前にいるのは、先の人生のことなんて考えない、今生きることだけしか考えてこなかった人々だ。
そんな人達に、俺は未来の話をしようとしている。
通じるだろうか。分かってくれるだろうか。
いや、分かってもらうのだ。何としても。
「ここにいる人々は、皆一つの志のもとに集まった…。そう、憲兵局を倒し、平和な祖国を取り戻すという志のもとに」
そのはずだったのだ。
そして俺は今も、その志を忘れてはいない。
「だけど今…今はどうだろう。皆もう分かってると思うけど…。今は皆、ルティス帝国に守られている状況に落ち着いてしまって、祖国のことを忘れてしまっているんじゃないかと思う」
俺がそう言うと、ほとんどのメンバーが、ばつが悪そうに俯いてしまった。
そう。皆分かっているのだ。
分かっていて、目を背けていたのだ。
「訓練の様子を見ていてもそう。皆、戦う気を失ってしまっている。皆も自覚があると思う。俺も…自覚がある。もっと早くに、何とかしておくべきだったと…」
ルレイア殿の言う通り、全ては俺の見通しの甘さ故に引き起こされた事態なのだ。
そこは、深く反省している。
「今の状態が、楽で、過ごしやすいのは分かる。俺だってそうだ。こんな偉そうなことを言える立場じゃない。…だけど、思い出して欲しい…。この国は、俺達の祖国じゃない」
皆、はっとして顔を上げた。
気づきたくないことを気づかされた、そんな顔だった。
「俺達の祖国は、皆が思い出したくなくて記憶の中に閉じ込めた…あの辛くて、苦しい国なんだ。認めたくなくても…それが事実なんだ。俺達は本来、その祖国を救う為に…立ち上がったんじゃなかったのか」
皆が今、何を考えているのか分かる。
その苦しげな表情を見ていたら。
彼らは今…懐かしい、憂える祖国を思い出しているのだ。
そして、現実を受け止めている。
自分達は、この楽園のような国じゃなくて、あの地獄のような国の出身なのだと。
あの国が、自分達の本当の居場所なのだと。
認めたくなくても、認めなくてはならない事実だ。
「ルティス帝国で、安楽な生活を貪る為じゃない。俺達はいずれ、この国で力を蓄えて、祖国に帰らなきゃならない。戦わなきゃならない…。あの忌まわしい憲兵局と大将軍を相手に。それが使命なんだ。皆…今一度、それを思い出して欲しい」
皆そんなことは分かってる。
分かっているけど、今のこの生活を手離すのが怖いのだ。
だから俺は今、必死に…仲間達の心に、訴えかけようとしていた。
俺は、『青薔薇解放戦線』の仲間達を、いつもの訓練施設に集めた。
普段こんなことは滅多にしないから、彼らの前に立つのは緊張した。
でも、今は緊張している場合ではないのだ。
「坊っちゃん…大丈夫ですか」
俺が酷く緊張していることに気づいてか、ユーレイリーが声をかけてくれた。
「大丈夫だよ」
この期に及んで、緊張するのでやめます、なんて情けないことは言えないからな。
俺は一つ深呼吸をして、仲間達の前に立った。
「皆…わざわざ集まってくれてありがとう。今日は…俺から皆に、話したいことがある」
出来るだけ高圧的にならないように、声のトーンに気を付けた。
上から目線で話すリーダーなんて、憲兵局だけで充分だ。
俺は、ああはなりたくない。
ルレイア殿が何と言おうと…俺は、仲間達と対等の立場でありたかった。
「話したいことっていうのは…他でもない、俺と、それから皆の…これからの行く末のことだ」
目の前にいるのは、先の人生のことなんて考えない、今生きることだけしか考えてこなかった人々だ。
そんな人達に、俺は未来の話をしようとしている。
通じるだろうか。分かってくれるだろうか。
いや、分かってもらうのだ。何としても。
「ここにいる人々は、皆一つの志のもとに集まった…。そう、憲兵局を倒し、平和な祖国を取り戻すという志のもとに」
そのはずだったのだ。
そして俺は今も、その志を忘れてはいない。
「だけど今…今はどうだろう。皆もう分かってると思うけど…。今は皆、ルティス帝国に守られている状況に落ち着いてしまって、祖国のことを忘れてしまっているんじゃないかと思う」
俺がそう言うと、ほとんどのメンバーが、ばつが悪そうに俯いてしまった。
そう。皆分かっているのだ。
分かっていて、目を背けていたのだ。
「訓練の様子を見ていてもそう。皆、戦う気を失ってしまっている。皆も自覚があると思う。俺も…自覚がある。もっと早くに、何とかしておくべきだったと…」
ルレイア殿の言う通り、全ては俺の見通しの甘さ故に引き起こされた事態なのだ。
そこは、深く反省している。
「今の状態が、楽で、過ごしやすいのは分かる。俺だってそうだ。こんな偉そうなことを言える立場じゃない。…だけど、思い出して欲しい…。この国は、俺達の祖国じゃない」
皆、はっとして顔を上げた。
気づきたくないことを気づかされた、そんな顔だった。
「俺達の祖国は、皆が思い出したくなくて記憶の中に閉じ込めた…あの辛くて、苦しい国なんだ。認めたくなくても…それが事実なんだ。俺達は本来、その祖国を救う為に…立ち上がったんじゃなかったのか」
皆が今、何を考えているのか分かる。
その苦しげな表情を見ていたら。
彼らは今…懐かしい、憂える祖国を思い出しているのだ。
そして、現実を受け止めている。
自分達は、この楽園のような国じゃなくて、あの地獄のような国の出身なのだと。
あの国が、自分達の本当の居場所なのだと。
認めたくなくても、認めなくてはならない事実だ。
「ルティス帝国で、安楽な生活を貪る為じゃない。俺達はいずれ、この国で力を蓄えて、祖国に帰らなきゃならない。戦わなきゃならない…。あの忌まわしい憲兵局と大将軍を相手に。それが使命なんだ。皆…今一度、それを思い出して欲しい」
皆そんなことは分かってる。
分かっているけど、今のこの生活を手離すのが怖いのだ。
だから俺は今、必死に…仲間達の心に、訴えかけようとしていた。