The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
そう…マフィア。

二人の使用人がこの家に来たときから、私は彼女達が裏社会の人間であることに気づいていた。

彼女達が時折見せる、ピリピリとした皮膚を焼くような鋭い視線。

あれは恐らく、私の周囲を警戒しているのだ。

ルヴィアさんは何も言わないが…彼女達を置いた本当の理由は、私のボディーガードにする為なのだと思う。

自分がいない間、私の身辺を警護させる為に。

家事云々は建前だ。

その証拠に、二人共私を一人で外出させてはくれなかった。

食料品や日用品などの日常的な買い物は、奥様にそんなことをさせられませんから、と二人が行ってくれたし。

それでも何か必要なものが出来たときは、私がアシスファルト語を喋れないことを口実に、買い物に行くなら通訳になりますよ、と二人のうちどちらかがついてきた。

二人共、それが仕事なのだ。私にみすみす怪我をさせたら、彼女達の首が飛ぶのだ。

そう思うと、私も断ることは出来なかった。

それに、一人でいたら私は…きっと罪悪感に押し潰されてしまっていたから。

ルヴィアさんが二人を置いたのは、そういう理由もあるのだと思う。

家に一人でいたら、私が気に病むだろうと。

フューニャをあまり一人にさせるな、とルヴィアさんに言い含められているのだろう。部屋に一人でいて、思考の沼に陥りそうになったときは必ず、二人のうちどちらかがさりげなく話しかけにきたり、気分転換に散歩でも行きましょうか、と誘ってくれた。

その気遣いが、とても有り難かった。

けれど、祖国を忘れてしまうことは出来なかった。

アシスファルトでは、箱庭帝国の革命のニュースなんて知ることは出来なかった。

ルヴィアさんはある程度知っているのだろうが、私にはほとんど何も言ってくれなかった。

意地悪で黙っているんじゃないのは、私にも分かっている。

言えば余計に私が心配すると思って、何も言わないでいるのだ。

けれどそうやって何も言わないでいられると、私は不安が募った。

今祖国は、ルティス帝国は、ミルミル達は、どうなっているのだろう?

暗い気持ちになりかけた、そのとき。

タイミングを図ったかのように、ルヴィアさんが帰ってきた。
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