The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルヴィア

──────…と、いう訳で。

ホワイトデーのその日、俺は右手にケーキと、紅茶。

そして左手には、ジュエリーショップのカタログがぎっしり詰まった紙袋を持っていた。

フューニャが、これで…喜んでくれると良いのだが。

玄関前に辿り着き、俺は一つ、大きく深呼吸した。

…よし、行くぞ。

「フューニャ…。ただいま」

ロックを開け、自宅に入る。

いつもなら、その音を聞き付けて、てこてことフューニャが寄ってくるのだが…。

この日、フューニャは俺のもとには来なかった。

代わりに、廊下の突き当たりの柱の影から、顔だけをちょびっと出して、こちらをじーっと見つめていた。

今日が何の日か分かってますね…?の顔だな。

とても可愛い。

「フューニャ…。あのな、ケーキ買ってきた。ホワイトデーだろ?今日」

「…」

どうやら俺がホワイトデーを忘れていなかったことを確認出来たので、フューニャはてこてこと寄ってきた。

よしよし。第一関門突破。

そして、いつもの浮気チェックが始まった。

ふんふん、すんすん、と鼻をひくつかせながら、俺の周りをぐるりと一周。

これも見事にクリアし、俺がシロだと分かったフューニャは、ぽふ、と俺にくっついてきた。

「可愛い妻にただいまのキスをしてください」

「はいはい、ただいま」

この瞬間が、俺は一日のうちで一番好きである。

しかし、まだ安心は出来ない。

俺の用意したプレゼント一式が、もしフューニャのお眼鏡に適わなかったら。

そう思うと、背筋も冷たくなるというとのだ。

「可愛い妻にホワイトデーのお返しをください」

「勿論。まずこれ…ケーキな。●●店の、予約限定ケーキ」

「!」

フューニャもあの店の噂は聞いていたようで、はっとしていた。

「…よく買えましたね。あそこのケーキなんて」

「コネでちょっとな。早いうちに動いてたから、そんなに大変でもなかったよ」

嘘である。結構苦労した。

だからこそ、喜んでくれると嬉しいのだが。

「それと、この紅茶も」

「…」

王室御用達の紅茶の茶葉。パッケージを見るだけで、これがどれだけ高価なものかはフューニャでも分かることだろう。

ケーキと紅茶を交互に見つめたフューニャは、満足したように再度俺にぽふ、と抱きついてきた。

どうやら、合格であるようだ。

良かった~…。

心底ほっとした。
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