The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
彼を前に、反論しようとする者なんていやしない。

「我々に気づかせず、数百人規模をまとめ、扇動するだけの器量がある者が、国内にどれだけいる?」

「…」

…いないな。

少なくとも一般国民に、そんな者はいない。

いるとしたら…恐らくは。

「リーダーは憲兵局の関係者だろう」

大将軍のその言葉で、自分達が疑われていると思ったのだろう。

大将軍の腰巾着達は、大袈裟に驚いてみせた。

「まさか、そんな!同志大将軍、そんなことは有り得ません。我々のうちに、裏切り者がいるとおっしゃるのですか」

…馬鹿馬鹿しい。

この国で、信頼関係を語るなど。

「お前達でなくても、お前達の家族もいる。それに…我が娘も一人、行方不明になっているそうだ」

「!」

大将軍の…娘が?

まさか。

「そ、そんな…。同志大将軍のご息女が…革命軍に参加している、と?」

「何かの間違いでしょう?」

「それは分からん。でも…その可能性はある」

…大将軍のご息女が本当に革命軍に参加しているのだとしたら。

あながち…無能な革命軍という訳でもなさそうだが。

それにしたって状況が悪い。本当に、余計なことをしてくれた…。

「それで?『青薔薇解放戦線』について、他に何か分かっていることは?」

「は、はい」

大将軍に尋ねられ、新米局員は怯えながらも、必死に答えた。

「それが…『青薔薇解放戦線』を支援している後ろ楯について…」

「判明したのか」

「まだ推測ですが…。帝国騎士団が絡んでいるかと」

…ルティス帝国で革命軍の後ろ楯になれるのは、帝国騎士団くらいだろうな。

…いや、もう一つあるか…。

「それから…情報によると、『青薔薇連合会』にも協力を仰ごうとしていると…」

「…何だと?」

忌まわしいその名前に、私は思わず沈黙を破って、声を出してしまった。

自分でも、声が震えているのが分かった。

「同志アシュルー…?どうなされた」

同僚の一人が、私に声をかけた。

はっとして、私は気を落ち着かせた。

今は駄目だ。『青薔薇連合会』を知っていること…勘づかれてはいけない。

「いえ…。まさかルティス帝国のマフィアが絡んでいようとは思わなかったもので」

「そうですな…。マフィアにまですがるとは、存外、革命軍にも余裕がないようだ」

顔は冷静を装っていたものの、私は内心怒りに燃えていた。

『青薔薇連合会』だと?

あの忌まわしい男が所属する組織。

まさか本当に、革命軍は奴らを後ろ楯にしようとしているのか?
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