The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルレイア

───────…ルアリスの部下、ユーレイリーがもたらした凶報を聞いて。

俺は、政府が堕落した国の悲惨さを痛感した。

あぁ、俺は箱庭帝国出身じゃなくて良かった。

あの国に生まれるくらいなら、ルティス帝国の上級貴族に生まれる方がまだましだよ。

ウィスタリア家とかな。

「…」

ルアリスは、無言で唇を噛み締めていた。

さっきまで、皆で楽しく保健体育の授業をしていたのが夢みたいだ。

言っとくけど、俺悪くないから。

俺には何の責任もありません。

あぁ、他人事で良かった。

「…どうするんです?ルアリスさん」

聞くまでもないことではあるが、黙っていても話が進まないので、一応聞いてみる。

「…俺は…」

…見ていて気の毒になってくるな。

まぁ、こいつの見通しが甘いのはいつも通りだが。

それにしたって、憲兵局とやらの卑劣なことと言ったら、帝国騎士団と良い勝負だな。

革命起こしたくなる気持ちも分かるよ。

「…よその国のことながら…糞ですね、憲兵局とやらは」

「…同感だな、ルレイア」

ルルシーも俺と同意見らしい。

まぁ、誰でもそう思うだろう。

ユーレイリーからもたらされた知らせは、正に凶報だった。

憲兵局が、『青薔薇解放戦線』に講和の打診をしてきたのだ。

和解の為に、交渉の席について欲しいと。

無血の革命を望んでいたルアリスにとっては、まんざらでもない申し出だ。

…条件がなければ、の話だが。

憲兵局は交渉の条件として、「革命軍のリーダーであるルアリスが」「一人で」箱庭帝国に戻ってくること、とあった。

ルアリスに、一人で敵の総本山に乗り込んでいって、交渉の席につけと言っているのだ。

これが何を意味するのかなんて、馬鹿でも分かる。

「…まず、間違いなく罠でしょうね」

和解の交渉なんて、ルアリスを釣る為の口実でしかない。

一人で来いなんて、よくもまぁそんな厚顔無恥なことが言えたもんだ。

素直に、「ぶっ殺したいので丸腰で殺されに来てください」と言えば潔いものを。

そこまで露骨に革命軍をぶっ潰したいか。

奴ら、プライドとかないのかな?

帝国騎士団といい、頭がおかしい奴がリーダーになると下の者は大変だな。

その点、うちの組織はホワイトで良かった。

おまけに。

憲兵局の頭のおかしいところは、それだけではない。

交渉の呼び掛けと共に、こんな添付文書があった。

「『青薔薇解放戦線』のメンバーの親族を保護している」と。

これは一体、どういう意味か。

考えるまでもない。これは人質だ。

革命軍の構成員が祖国に残してきた遠い親戚を、全員引っ捕らえて人質にしているのだ。

もし交渉の申し出を拒否するなら、こいつらがどうなっても良いんだな?と脅しているのだ。

これが和解を求める奴のやることか。

どう考えても罠だ。

「…下衆共め」

俺が言えた義理じゃないが、思わずそう吐き捨ててしまうほどには…奴らのやり方は卑劣だった。

これは俺達のようなマフィアのやり方だ。裏社会のやり方だ。

それを、まがりなりにも一国の政府機関がやってのけるとは。

頭がおかしいとしか言いようがない。

オルタンスだって、こんなやり方はしないだろうに。

「坊っちゃん…」

黙ってしまった主君を気遣うように、ユーレイリーが声をかけた。

黙ってたって、やるべきことは変わらないだろう。

「無視一択ですよ、こんなの。殺したいので来てくださいなんて言われて、のこのこ出ていく馬鹿がいますか」

ふざけんな、和解したいならまずその人質を返せ、と叩きつけてやれば良い。

交渉を破棄すれば、憲兵局は人質を殺すだろうが…そんなのは知ったことか。

しかし。

「…戻ります」

ルアリスのアホは、何を血迷ったか、そう言った。
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