The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「箱庭帝国に行きます。一人で」
「…」
「人質を見捨てることは出来ませんから」
「…頭がイカれてるな、お前は」
…ルレイア殿が、敬語じゃなくなった。
短い付き合いだが、分かる。
これは、ルレイア殿が本気でキレたときだ。
なんと俺は、人生で一度ならず二度も、ルレイア殿を本気でキレさせてしまった。
俺のような命知らずは、そうそういないだろう。
「どうやらお前が真正の馬鹿だと判明したから、優しくて親切な大人の俺が、懇切丁寧に教えてやりますよ。お前のやろうとしていることは、限りない自己満足と、そして果てしないまでの責任放棄だ。意味が分かりますね?」
「…はい」
人質を見捨てたくない、というのは俺の自己満足。
そして、みすみす殺されに行くのは…責任放棄だ。
「お前がいなくなったら、『青薔薇解放戦線』はどうなる。指導者をなくした組織がどうなるか…想像出来ない訳じゃないでしょう」
「…そうですね」
俺という要を失った『青薔薇解放戦線』がどうなるか…簡単に想像がつく。
あっという間に、憲兵局に取り込まれてしまうだろう。
それが憲兵局の目論見なのだ。俺を殺して、同時に革命軍も事実上崩壊させる。
だから俺が箱庭帝国に帰れば、全てが憲兵局の思いのままだ。
それでも。
「俺は帰ります。正義を謳う俺が、他人の正義を信じない訳にはいきませんから」
もしかしたら、憲兵局は本当に和解を望んでいるのかもしれない。
例え99%罠だとしても。
1%でも、交渉する可能性があるなら。
俺はそれを信じなければいけない。
それが俺の掲げる革命の在り方なのだから。
「俺がここで動かずに、人質を見捨てたとなれば…憲兵局はそれを口実に俺を糾弾するでしょう。俺は正義を行う為に革命を起こしました。だから俺は憲兵局を信じます」
「…」
綺麗事だと言われるかもしれない。
実際俺の言っていることは、綺麗事だ。
でも、後悔はしない。
きっと…きっとあの伝記の英雄なら、俺と同じ選択をしただろう。
だから。
「俺は行きます」
俺の信じる、正義の為に。