The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…」

ルレイア殿は、真顔で俺を睨んでいた。

…この様子じゃ、憲兵局より先に、ルレイア殿に殺されてしまいそうだな。

何と言われようと、俺は行くつもりだが。

すると。

「…坊っちゃん。お言葉ですが…私も、行くべきではないと思います」

ずっと黙っていたユーレイリーが、俺にそう意見した。

「殺されに行くようなものです…。あなたの主義を非難するつもりはありません。でもそれではただの犬死にです。あなたは目先の正義の為に、もっと大きな目的を…革命を果たすという目的を放棄しようとしています」

「…ユーレイリー…」

ずっと俺を傍で支えてくれていた者の意見は、やはり、酷く心に来た。

…犬死に、か。

確かにそうかもしれないな。

「そこの執事さんの言う通りです。あなたの考えは甘過ぎる。誰一人の犠牲も出さずに、大義を為せると思いましたか」

ユーレイリーに続いて、ルレイア殿が手厳しく追撃した。

「…何の罪もない人質達が、必要な犠牲だと言うんですか」

「その考えが甘いんですよ。罪があろうがなかろうが、戦争が起きれば人は死ぬ。本当に誰一人殺したくないのなら、あなたは革命なんて手段を取るべきではなかった。本国に引っ込んで、父親の後を継いで内側から憲兵局の改革を目指すべきだった」

「…」

そのやり方は…俺も確かに考えた。

でも、それでは駄目だ。

憲兵局の威信とプライドに凝り固まった憲兵局を、内側から変えるなんてことは不可能だと思ったのだ。

「あなたは平和を取り戻そうとしている。平和を勝ち取る為に戦争をしようとしている。この矛盾に気づいていなかったとでも?あなたが革命を起こしたせいで、今まで平和に暮らしていた人の安寧が脅かされてるんですよ。そこは分かってるんですか?」

…分かっている。

俺が革命を起こしたせいで、崩された平和があるってこと。

俺のせいで…生まれた犠牲があるんだってこと。

「それでもあなたは、必要な犠牲の上に、もっと多くの人々を救う決断をした。なら、最後まで生きて、やり遂げなくてはならない。犠牲になった者を、無駄死にさせない為に。あなたにはその責任がある」

「…」

その通り。

その通りだ。ルレイア殿の言うことが正しい。
< 257 / 791 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop