The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
ルーシッド殿と会った後。

その帰り道。

俺に付き添っていたユーレイリーは、ずっと難しい顔で黙っていた。

…長い付き合いだから、分かる。

これは、怒ってる顔だ。

…怖いなぁ。

普段大人しい人間ほど、怒ると恐ろしいというのは本当だ。

「…ユーレイリー」

「…何ですか」

見てみろ。声も非常に低い。

最上級に怒ってるときの声だ。

言うべき言葉を間違えたら、何か飛んでくる可能性がある。

「…やっぱり、反対してるのか?」

「当たり前です」

…だよなぁ。

ルレイア殿を説得するのも死ぬほど大変だと思うが、ユーレイリーはそれ以上に大変だ。

「…ごめん」

ここは、謝罪だ。

まず謝るのが先決。

「別に謝って欲しくはありません」

「…」

駄目だ。会話が上手いこと成り立たない。

これは本格的だ。

昔、「革命を起こそうと思ってる」と初めてユーレイリーに話したときと同じくらいに怒ってる。

謝って欲しくないと言われても…謝る以外に何て言えば良いのか分からないよ。

「…ユーレイリー。お前がいつだって俺のことを第一に思ってくれてることは分かってる。だけど…」

「あなたは私にとって最も大切な主君です。あなたの執事になったとき、至らないことばかりであなたにたくさんの迷惑をかけ、それでもあなたは私をクビにすることもなければ、難癖をつけて私を処刑することもしなかった」

「…」

「それどころか私を庇ってさえくれました。だから私はこの命を、あなたの為に捧げようと思いました。あなたの為なら、私は喜んで命を捨てられる…。そうだというのにあなたは、私の気も知らず、みすみす死にに行こうとしている」

「…死にに行くつもりはないよ」

俺だって、死にたい訳じゃないんだから。

しかし、ユーレイリーにとっては自殺行為も同然なようで。

「死にに行くのと一緒です。坊っちゃんは自分の正義感に酔ってしまって、残された者の気持ちを全く考えていません。私の主が、こんなに情けない人間だったとは…」

「…幻滅したか?ユーレイリー」

「はい」

…即答かよ。

そこは嘘でも、いいえ、と言って欲しかった。

はっきり言ってくれるなぁ…。

「心底あなたを軽蔑しました。もう二度とあなたのお世話はしません」

「え…!」

そんな。

怒ってるとは思ってたが、まさかそこまで?

「私からの信頼を取り戻したいなら、生きて、無事に戻ってくることです。そうでないなら、私はあなたを許しません。死んでも許しません。あの世で会ったら、まずいの一番にぶん殴って、その後は徹底的に無視します」

「えぇぇ…」

何なんだ、それは。

ユーレイリーって、こんなに執念深かったっけ?

「だから無事に戻ってきてください」

「…分かったよ」

あの世でユーレイリーにぶん殴られるのも、無視されるのも御免だ。

こんな脅し方があるか?

ルレイア殿じゃないんだから。

「…きっと戻ってくるから」

そして、平和を取り戻した祖国を、この目で見る。

それまでは、死ぬ訳にはいかないな。
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