The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
憲兵局の拷問室で、上級職員と二人きり。

何を言われるのか、何をされるのか…。

いずれにせよ、怖くはなかった。

なんてことはない。ルレイア殿が単身乗り込んできたときの方が、よっぽど怖かった。

あの死神と比べたら、憲兵局の上級職員が何だ。

ちっとも怖くない。

「…会いたいと思っていたぞ。革命軍のリーダー」

上級職員は、俺を値踏みするように見つめて、そう呟いた。

「それは光栄だな」

俺も会いたいと思っていたよ。

出来れば、同じテーブルについて、対等な立場で話したかった。

残念ながら、それはもう叶いそうにないが…。

「…それで?俺をどう拷問するつもりだ?好きにしてくれれば良いが…俺は何も喋らないぞ」

仲間を売るくらいなら、自殺した方がましだ。

口の中に、毒を仕込んできた。

いざとなれば、これを飲んで自決する。

仲間を守る為に。

だから、拷問には意味がない。

俺は絶対に口を割ったりはしない。

すると。

「拷問をするつもりはない。私はただ…お前に聞きたいだけだ」

「…何を?」

「私を信用してくれ。お前を騙すつもりはないし、殺すつもりもない…。人質も殺したりはしない。全員解放してやる」

「…」

…詐欺師が、騙してないと言い張ってるのと同じ。

全く信用ならない。

そうやって、俺を安心させて情報を吐かせ…用がなくなったら殺す。

そうするつもりなのだろう。

この期に及んで彼らの言葉を信じるほど、俺はお人好しではない。

平和的交渉を信じて戻ってきた俺が言うべきではないが。

「…この部屋に監視カメラはない。ここには私とお前しかいない…。私を信用しろ。悪いようにはしない」

「どうやって信じろと?憲兵局の制服を着てる人間を」

「…」

「交渉をする為と言って騙して…。拷問室に連れてきて拘束した上で、今度は、悪いようにしないから喋れ、って?」

面白い冗談だな。

何を言われようとも、誰が喋るものか。

「私は本質的に、お前と同じ存在だ…。私もまた、この国を変えたいと思っている。憲兵局を打倒し、祖国を解放したい」

「は…?」

この人…何を言ってる?

俺と同じ?憲兵局を打倒…?

「信じてくれ。私はお前の味方だ」

「…」

レヴミールは、真っ直ぐに俺の目を見つめた。

その目は…嘘をついているようには見えなかった。

しかし…それだけで信用することは出来なかった。

「…」

「…信じられないのも無理はない、か」

レヴミールは一つ嘆息して、そして。

制服の帽子を持ち上げた。

「なら…私も自分の本当の姿を見せよう」

「…?」

短い黒髪を、レヴミールは乱暴に掴んだ。

その下から…ぱさっ…と、長い金髪が広がった。
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