The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideカセイ

──────…さすがの革命軍のリーダーも、これには驚いたようだった。

「…女…?」

「…」

基本的に、女は憲兵局には入れない。

だから、女である私が憲兵局に入るには…こうして、男の振りをしなければならなかった。

本来私は、レヴミール家とは何の関係もない人間だ。

それなのに私は、その名前を騙っている。

「私の名前は…カセイ。カセイ・リーシュエンタール」

「…カセイ…リーシュエンタール…?」

それが、私の本名。

でも私はもう、この国でその名前を名乗ることは出来ない。

だってその女はもう…死んだはず、なのだから。

「表向きは、私の名前はレヴミールになっている。パリヤ・レヴミール…。これは実在する人間の名前だ。もう亡くなっているけど…」

「…死んだパリヤ・レヴミールに…成り済ましている、ということか」

「そうだ」

そうでもしなければ、私はこの国で生きられないから。

顔も知らない、性別も違う、名前しか知らないパリヤ・レヴミールの戸籍を使って…憲兵局に入った。

「どうして…そんなことに」

「…」

もっともな質問だな。

でも…どうしてそんなことになったのかなんて、私が聞きたい。

私にも分からないのだ。

どうして…あの人が…私にこんなものを残したのか。

「…パリヤ・レヴミールは、私の元上官の弟だったそうだ」

「…上官…?」

「私一人だけが生き残ったときの為に…残しておいてくれたんだ。私が箱庭帝国に戻って生きられるようにと…」

…あの人が、レヴミール家の人間だなんて知らなかった。

まさか、憲兵局員の家系だったなんて。

私はあの人が亡くなってから初めて、あの人の本名と生い立ちを知ったのだ。

あの人が私に居場所を残してくれた。だから私は…異国の地で、路頭に迷わずに済んだ。

全てを諦めて、投げ出してしまわずに済んだ。

どうして…私にこんなものを残してくれたのかは…分からないけど。

「…今は、そんなことはどうでも良い」

私の経歴について話していたら、日が暮れてしまう。

そんなことはどうでも良い。それよりも…私は聞かなければならないことがある。

「私の質問に答えて欲しい。お前は…お前は、あの男と手を組んだのだろう?」

「あの、男…?」

私は、記憶に残っているあの男の最後の姿を思い出した。

今でも、鮮明に脳裏に焼き付いている。

私を騙し、私の仲間達を謀り、無情に銃口を突きつけた、あの冷徹な姿。

絶対的な強者の目だった。

人を騙すことなんて何とも思っていない…。何処までも、自分と自分の大事な者のことしか考えていない利己的な人間。

私は、あの男のことが許せない。

絶対に…何があっても。あの男だけは。

「今すぐに…ルレイア・ティシェリーと手を切れ。あの男だけは、信用してはいけない」



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