The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
カセイ殿は、俺の枷を外してくれた。

その上で、彼女は時間をかけて、事のあらましを俺に聞かせてくれた。

カセイ殿はかつて、箱庭帝国のマフィア、『シュレディンガーの猫』のメンバーだったそうだ。

『シュレディンガーの猫』については、詳しくないが…一応概要くらいは知っている。

確か…憲兵局によって祖国から追放された組織だったはず。

結局『シュレディンガーの猫』はルティス帝国で潰えたと聞いていたが…それ以上のことは知らなかった。

まさか、生き残りがいたなんて…。

そして俺は初めて、『シュレディンガーの猫』の最期を知った。

彼らは『青薔薇連合会』と組んで、帝国騎士団を倒すという約束を交わした。

それなのに、『青薔薇連合会』は帝国騎士団と通じて『シュレディンガーの猫』を裏切り、カセイ殿の仲間を皆殺しにした。

カセイ殿自身も…ルレイア殿に撃たれ、殺されかけたという。

その後カセイ殿は奇跡的に命を取り留め、彼女の上司が彼女の為にと残してくれていた、死んだ上司の弟の戸籍を利用して…今は、パリヤ・レヴミールという名前で、憲兵局の上級職員という立場から、箱庭帝国を変革させる為に生きている、とのこと。

そんな話はルレイア殿にも聞いたことがなくて、俺は驚いてしまった。

ルレイア殿と、箱庭帝国に…そんな因縁があったなんて。

確かに、カセイ殿がルレイア殿を恐ろしいと言うのも分かる。

…そして、やりかねない人だ、と思った。

あの人は…良い意味でも悪い意味でも、他人に対して容赦がない。

自分の目的の為なら、誰を犠牲にしても構わないというタイプの人だ。

実際、俺に協力してくれているのも…協力と言うよりは、俺達を利用していると言った方が正確だ。

利用価値があるから、俺達に協力する。

そもそも…憲兵局がルルシー殿を傷つけたりしなかったら、ルレイア殿は今頃、革命とは全く無関係だったはずだ。

彼が革命に関わっているのは、あくまでもルルシー殿の復讐の為。

箱庭帝国を救いたいなんて気持ちは、毛頭ない。

カセイ殿は、余程ルレイア殿を憎んでいるのだろう。

カセイ殿の言葉の節々に、ルレイア殿への憎しみがありありと感じられた。

それもそうだろう。カセイ殿は、仲間をルレイア殿に殺されたのだ。

そして自分自身も、殺されかけた。

ルレイア殿のやり方は、実に彼らしい…とも言えるが。
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