The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
確かに非道なものだ。カセイ殿が、ルレイア殿を酷く憎むのも無理はない。

「あの男は、自分が裏切られた苦しみを知りながら…平気で我々を裏切ったのだ。元マフィアの私が言うのもおかしな話だが…あれは生まれながらの悪党だ。あんな人間を信用してはいけない…」

「…」

「いつ背中を撃たれるか分かったものではない。奴を味方にはするな」

…カセイ殿が、俺の為を思って言ってくれているのは分かる。

その目を見れば分かる。

何処までも真摯で、真っ直ぐな瞳だった。

ルレイア殿が、味方にするには危険な人間であるということも理解している。

今のカセイ殿の話を聞いて、余計にそう思った。

俺達を利用した上で、背中を撃つことも厭わない人だ。

俺もそう思う。彼は俺達を殺すことを何とも思わないだろうから。

そういう意味では…カセイ殿の言う通り、生まれながらの悪党…とも言えるのかもしれない。

生まれたときからああだったのかは分からないけど。

でも。

「…ルレイア殿には、俺達を裏切る理由はないはずだ」

『シュレディンガーの猫』のときとは、状況が全く違う。

ルレイア殿は、『青薔薇解放戦線』を裏切ったところで…何のメリットもないし、何のデメリットもないはずなのだ。

彼の目的は、あくまで憲兵局への復讐だけ。

それ以外の目的はない。

そこに俺達が絡んでいようといまいと関係ない。

俺達がルレイア殿の邪魔さえしない限り…俺達に彼の刃の矛先が向けられることはないはず。

「…甘い。あの男の腹など読めるものか…。何を考えているか分からないのだから」

「…案外、何も考えてないんだと思うけど」

「…何?」

俺の目から見れば、あの人は。

多分、壮大な深謀遠慮なんて何処にもない。

「あの人は、恐らく…自分と自分の好きな人のことしか考えてないから…」

彼のルルシーを傷つけた犯人…かもしれない。

たったそれだけの理由で彼は、なりふり構わず単身で、烏合の衆とはいえ革命軍のど真ん中に乗り込んできたのだ。

さながら暴走機関車のように。

そんな人が、何を考えているのかなんて…。

…案外、何も考えてないんじゃないかな。

俺はそう思う。良くも悪くも…単純な人だから。
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