The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「本当に、憲兵局と真正面からぶつかるつもりなのか?」

「…」

これについては、俺も安易に答える訳にはいかなかった。

カセイ殿は、身分を偽っているとはいえ…憲兵局の人間なのだから。

俺が警戒しているのに気づいたのか、カセイ殿は、

「心配しなくて良い。私はお前に危害を加えるつもりはない。話が済んだら、無事にルティス帝国に帰すことを約束する」

「帰す…?どうやって?」

「お前は自決したということにする。秘密裏に国境まで送ってやる。憲兵局員の立場を利用すれば難しいことじゃない」

とはいえ…彼女にとっても少なからず危険な橋を渡っているはず。

そこまでして…。

「…」

…俺は、この人を信じて良いのだろうか。

信じよう。それ以外に、俺が生き延びる手段はないのだろうから。

「私は憲兵局員という立場を使って、内側から箱庭帝国を変えるつもりだ。やり方は違えど…目的はお前と変わらない。出来ることなら、お前と協力したいとも思ってる」

「カセイ殿…」

「最初に革命軍のことを聞いたとき、余計なことをしてくれたと思った…。無駄なことをしていると。でもこうして今、革命軍のリーダーたるお前と話して、分かった。お前達になら…賭けても良いかもしれない」

カセイ殿は、再び俺と向かい合って、真っ直ぐに俺を見つめた。

「私は祖国を変える。かつて無念のうちに散っていった、家族や仲間達の為にも。だから…私も協力させて欲しい。『青薔薇解放戦線』の革命に」

「…ありがとう、カセイ殿」

殺されるかもしれないと思いながら、祖国に帰ってきて。

意外なことに、殺される代わりに俺は、非常に心強い協力者を得た。
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