The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideカセイ

─────…私は予定通り、ルアリスから一通り話を聞いて、その後ルアリスを秘密裏にルティス帝国に帰した。

私にとっても、危うい綱渡りであった。

憲兵局の同僚に対しては、こう言い訳をした。

「捕らえた男を尋問したところ、『青薔薇解放戦線』のリーダー本人ではなく、ルアリスはエーレンフェルトに成り済ました影武者であった」。

「その影武者を拷問して情報を吐かせようとしたものの、薬物耐性があって自白剤が効かない上に、拷問の最中に、苦痛に耐え兼ねて口の中に仕込んでいたらしい毒を飲んで死んでしまった」。

これが、私の用意したストーリーだった。

影武者であったとはいえ、貴重な革命軍のメンバーをみすみす死なせてしまって、非常に不甲斐なく思っている。

私はしおらしくそう言って、謝罪して見せた。

その代わりと言ってはなんだが、厄介な人質達の面倒は自分が見させてもらう、と申し出た。

幸いなことに、私の主張は特に反対もなく通った。

誰も、面倒事には関わりたくないもの。

反対する理由もない。

こうしてルアリスは無事に仲間達のもとに帰った。

去り際、彼は私に、一緒に来ないか、と言った。

ルティス帝国に一緒に来て、革命軍と一緒に戦わないかと。

でも私は断った。

私はあくまで、憲兵局員という立場で革命軍に協力したかった。

このまま私が革命軍のスパイのようなことを続けていたら、いつか憲兵局にばれて、私の身が危うくなるかもしれない。

彼はそれを危惧したのだろうけど。

でも、それでは駄目なのだ。

革命軍と、憲兵局。二つの異なる組織にそれぞれ所属しているからこそ出来る協力態勢がある。

私は内側から、ルアリスは外側から憲兵局を崩す。

これがもっとも理想的だった。

それに…ルティス帝国に行けば、奴がいる。

奴にまた会って、私は正気でいられる自信がなかった。

それにしても意外だった。ルアリスが、まさかあんなにあの男を信用しているとは。

そんな生易しい男ではないはずだが。
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