The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルアリス

─────…まさか、また戻ってこられることになるとは。

まず俺は、国境付近の、フランベルジュ殿の邸宅を訪ねた。

早いところ帝都に帰るべきだとは思っているのだが、まずはフランベルジュ殿に挨拶しようと思って。

それに、自分が生き残った実感がまだ沸いていなかったので…フランベルジュ殿の顔を見て安心したかったというのもある。

案の定、フランベルジュ殿は俺の顔を見るなり、幽霊でも見たかのような反応だった。

「ルアリス…。無事だったのか…」

…そう言われると思った。

自分でも思うくらいなのだから。

「はい…なんとか」

「怪我はしてないか?大丈夫なのか?」

「えぇ」

最初に少々手荒く扱われたせいで、節々が痛むけれど。

深刻な怪我はない。箱庭帝国に一人で戻っていって、多少のかすり傷で帰ってこられたというのは、まさしく奇跡だ。

よく生きていたなぁ。我ながら。

「無事で良かった…。ルアリス」

「心配をかけました。済みません…」

「一体…どうやって無事に帰ってこられたんだ?平和交渉は…?」

「…」

何と言って…説明するべきか。

カセイ殿に、ルレイア殿には自分のことを話すなと言われたが…フランベルジュ殿には…言っても良いのだろうか。

「…和平交渉はやはり罠でした。箱庭帝国に戻るなり、憲兵局に囚われてしまって…」

「!やはりそうだったか…。よく無事に戻ってこられたな」

「憲兵局の中に…反国家主義の局員がいました。その人に助けられたんです」

俺はカセイ殿の名前は伏せて、彼女のことを説明した。

憲兵局の中にも、箱庭帝国の現体制を打倒したいと思っている者がいることに、フランベルジュ殿は驚いていた。

憲兵局員と言えば、自分の保身のことしか頭にない連中だと思い込んでいたのだろう。

俺がそうであったように。

でも…憲兵局員だからって、皆が皆、悪魔のような連中な訳ではない。

「そうだったのか…。本当に…無事で何よりだ。リスクは大きかったが、結果としては良かったのかもしれないな。憲兵局内部に味方を得られたのは大きい」

「はい」

まぁ…あと少しで殺されるところだったけどな。

それでも、カセイ殿を味方につけられたのは大きい。

そう思うと途端に安心して、俺は思いっきり脱力してしまった。

ようやく、生き延びた実感が沸いてきた。

俺…生きて帰ってこられたんだな。

「帝都まで送ろう。仲間に連絡は?」

「まだです」

「なら、俺が連絡を入れておこう。ルアリスは少し休んでくれ」

え。でも。

「大丈夫です、今すぐに戻ります…。早く仲間を安心させてあげたいですから」

今頃ユーレイリーとか、胃に穴が開くほど心配してそう。

早く安心させてあげたい。

「だが…疲れているだろうに」

「疲れてますけど…大丈夫です。生きていられることに比べたら、何でもないです」

無事に帰ってこられたんだから、これ以上大事なことはない。

俺自身も、早く仲間の顔を見たい。

「…そうか、分かった。ならすぐに送らせる」

フランベルジュ殿も、俺の気持ちを理解してくれたようだ。

ふっと笑って、そう言ってくれた。

「ありがとうございます、フランベルジュ殿」

「本当に無事で良かった。革命軍には…お前がいないと、始まらないからな」

…そうか。俺、まだ…生きてるから、革命軍のリーダーでいられるんだな。

そう思うと、とても安心した。

俺がいなくても、セトナ様が上手くやってくれていただろうと思っていたが。

やっぱり…自分の手で、祖国に平和を取り戻したかった。

俺には、まだそのチャンスがあるのだ。

生き延びることが出来て、本当に良かった。
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