The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
更に。

「無事で良かったわ…本当に」

ラシュナまで、ちょっと涙ぐんでいた。

そんな…まさか泣かれるとまでは思っていなかった。

「悪運の強い男だ。さすがは革命軍のリーダーだな」

「無事で良かったね。怪我しなかったの?」

「しぶとい男じゃ。そうでなくてはな」

ヴァルタとヴィニアス、ミルミルも、労いの言葉をくれた。

こちらの三人は泣いてないから良かった。

「よく戻ってきてくれました…。ルアリスさん」

大号泣のセトナ様が、嗚咽混じりに言った。

物凄い罪悪感だ。

「ありがとうございます…。和平交渉は…上手く行きませんでしたが、なんとか命だけは無事に…戻ってくることが出来ました」

「交渉なんてどうでも良いです…。あなたが生きて戻ってきてくれたのだから…」

セトナ様に、交渉なんてどうでも良いとまで言わしめるとは。

自分で思っていたよりも…心配させてしまっていたようだ。

「もう無理はしないでください…。あなたの身に何かあったらって…私、ずっと心配で…」

「済みません…セトナ様。お願いですから…その、泣かないでください」

俺の胸にしがみついてしゃくりあげるセトナ様を、俺は必死に宥めた。

これ以上泣かれると、何と言うか…罪悪感が半端じゃないから。

「ごめんなさい…私、取り乱してしまって…」

セトナ様はようやく涙を拭いて、俺から離れた。

「でも…あなたが戻ってきてくれて、本当に嬉しいです。また会えて…良かったです」

「はい…。俺もまたあなたに会えて嬉しいです」

戻ってこれたんだな、って思った。

仲間のいるところに。

こんなに嬉しいことが、他にあるだろうか。

「それにしても…一体どうやって戻ってきたんだ?和平交渉ってのは罠じゃなかったのか」

感動の再会が少し落ち着いてから、ヴァルタが俺に尋ねた。

「罠だったよ。箱庭帝国領に入るなり捕らえられて…向こうの帝都に連れていかれて」

目隠しされてたから見えなかったけど…。

すると、俺が捕らえられた、なんて不穏な言葉を口にするものだから…セトナ様がはっとした。

「そんな!帝都に連れていかれたなんて…!それじゃあ、拷問されたんですか?怪我は…!」

「だ、大丈夫ですよセトナ様。実は…憲兵局の中に反国家主義の局員がいて、その人に助けられたんです」

「え…?」

これには、セトナ様も驚いて言葉を失っていた。

「危ない綱渡りにはなりましたが…。結果的には、憲兵局内部に協力者を得ることが出来ました。手ぶらでは帰ってきませんでしたよ」

「…!」

ぽかんとしているセトナ様に、ミルミルが噴き出した。

「全く、そなたという奴は…。恐ろしい男じゃのう」

「タダでは帰ってこなかったっていうのが良いよね。さすがだ」

ヴィニアスも珍しく上機嫌だ。

しかし、ラシュナは。

「で、でも憲兵局に協力者って…信用出来るの?」

憲兵局というだけで身構えてしまうのか、彼女は怪訝そうにそう言った。
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