The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「お言葉ですが…同志大将軍、何故私がスパイだと分かったのですか」

知らない間に、身辺調査をされていたのか。

それとも、かつてのルレイアのように…。

「同志レヴミール、貴殿が我が娘と同じ目をしていたからだ」

娘?

大将軍の娘と言ったら…確か。

「革命軍に参加している娘。セトナと同じ目をしている。あの子は昔から聡い子供だった。このままでは憲兵局の未来がないことを知っていた…」

「…」

「だから、いずれこうなると思っていたよ。あの子が選んだ男なのだから、革命軍のリーダーというのは…祖国の未来を託すに足る人間なのだろうな」

そう言って、ディルクは踵を返した。

そこまで分かっているのなら、何故。

「何故です。何故憲兵局の横暴を止めなかったのです。そこまで分かっていたのなら…!」

革命なんて待たずとも…もっと早く、箱庭帝国を解放出来たはずだ。

それなのに、何故この人はそれをしない。

何故、部下達を止めようとしなかったのだ。

「…無理だと思ったんだ。憲兵局は、遥か昔から、国民の生き血を啜って胡座をかいてきた。腐りきっているんだ。今更変えようとしても変わらない。憲兵局員も、国民もだ。この国を変えるには、もっと大きな力…外部から圧倒的な力で、全てを破壊してもらわなければならなかった」

「…!」

「この革命で、憲兵局は倒すべき絶対悪として君臨する。その上で革命軍は、圧倒的な力を持って我々を倒してくれるだろう…。そうすればきっと…皆目を覚ますはずだ。いずれにせよ…我々は滅びなければならないんだ。唾棄すべき歴史の汚点としてな」

…そんな、理由で。

今まで何もしなかったのか。憲兵局のやっていることが悪そのものだと分かっていながら。

そんな理由で…私達は祖国を追い出され。

そんな理由で…私の家族と恋人は殺されたのか。

憲兵局が唾棄すべき歴史の汚点というのは、紛れもない事実だな。

「…投降してください。これ以上、無益な血を流す必要はありません」

「それは出来ない。私は歴代憲兵局員の名誉と威信を背負っている…。戦わずに負けることは出来ない。憲兵局の大将軍として」

「…ならば、もう話すことはありませんね」

「そうだな。あとは…戦場で、雌雄を決するのみだ」

あくまで…戦って、負けなければ納得出来ないと。

ならば、そうすれば良い。

私はこの人を殺すことは出来ない。それをするのは…ルアリスの仕事だ。

私が出来ることは…。
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