The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルレイア

─────…俺が、最高に格好良く「ここは俺が引き受ける!行け!」という人生で一度は言ってみたい台詞を、ちょっと改変して言ってみたのには、訳がある。

ルアリスに、花を持たせてやりたかった?

残念ながら違う。俺はルアリスに花を持たせる気なんかない。何なら自分が花を持つ気満々である。

それなのに、ルアリスに一番美味しいところを譲ったのは。

何と言うか…まぁ、けじめ、って奴かな。

それに、無視して素通りさせてはくれないだろうし。

「…お久し振りですね、子猫ちゃん」

「…」

死に損ないの可愛い子猫ちゃんは、憎しみに染まった美しい目で、俺を睨み付けた。

おぉ怖。睨み殺さんばかりじゃないか。

子猫が威嚇してるようにしか見えないが。

「また会えて嬉しいですよ…。感動の再会ですね。お茶でも飲みながら、思い出話に花を咲かせますか?」

「…相変わらずだな。ルレイア・ティシェリー」

「そっちこそ。相変わらず愛想のない子猫ちゃんですね…。カセイ・リーシュエンタールさん」

全く以て、感動の再会ではないか。

自分を裏切り、もう少しで殺されるところまで追い詰めた相手と…戦場で再会、とは。

アニメか漫画で、そういう話ありそう。

「懐かしいですね、カセイさん…。その後どうでした?元気にしてましたか」

カセイ・リーシュエンタール。

彼女は元箱庭帝国のマフィア、『シュレディンガーの猫』の生き残りだ。

「…やはり知っていたのか。私が生きていたことを」

「そりゃ当然。そもそも…あなたの命を助けたのは俺ですからね」

カセイを殺したのは俺だが。

でも、カセイを救ったのもまた俺なのだ。

「しかし、部下からあなたがまた生きていると聞かされたときは驚きましたよ。あのとき確かに息の根を止めたと思ったんですけどねぇ。仮死状態で首の皮一枚繋がってたそうじゃないですか」

いやぁ、あれを聞かされたときは笑った笑った。

どんだけしぶといんだと。

ゴキブリ並みの生命力だ。

「面白いから、蘇生させて国に送り返しました。その後どうなろうと知ったことじゃないと思ってましたけど…やっぱりしぶといですねぇ。『シュレディンガーの猫』じゃなくて、『シュレディンガーのゴキブリ』とかに改名した方が良いんじゃないですか?…まぁ、あなた以外全員殺しましたけど」

「こら、ルレイア」

あんまり挑発が過ぎるぞ、とルルシーが俺をたしなめた。

ごめんごめん。懐かしい人に会ったもんだから、つい。

以前なら怒髪天突いて怒ったであろうカセイは、しかし今度は、挑発には乗らなかった。

ただじっと、俺を睨むばかりであった。
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