The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
こうして…直接顔を合わせるのは初めてだ。
「…ディルク殿…」
「セトナも…。よく帰ってきた」
「お父様…」
セトナ様にとっては…とても気まずい再会だろう。
「…本当に…よくここまで辿り着いた。今まで…こんなことが出来た者はいなかった。お前がそれをやり遂げるとはな…エーレンフェルトの息子。名前は確か…」
「…ルアリスです。ルアリス・ドール・エーレンフェルト」
「そう、ルアリスだ…。お前が、この国の英雄となる男だ」
…何だと?
俺は広々とした室内を警戒しながら、横目で周囲を見渡した。
護衛が室内を固めているとばかり思っていたが…。室内には、ディルク殿以外の人間は見当たらなかった。
そんなはずは…。護衛がいるはずなのだが。
何処かに潜んでいるのか…?
すると。
「そう警戒しなくて良い。この部屋には俺達以外誰もいない」
「…!?」
誰もいない、だって?
そんなはずは。
「人質も解放した。部隊にも武装解除を命じた…。戦争は終わりだ」
「どう…いう、ことですか」
この人は…一体、何を企んでいる?
人質を解放?武装解除?
「憲兵局は一切の主権を放棄する。俺の身柄も、『青薔薇解放戦線』に預けることにする」
「は…!?」
「出来ることなら…部下の命だけは助けてもらいたい…と言うのは、我が儘だろうか」
「…」
セトナ様も、ユーレイリーもミルミル達も…愕然として立ち尽くしていた。
俺は頭の中で、必死に現状を整理した。
この人は…憲兵局の大将軍。
その大将軍が、主権を放棄して身柄を預ける?
それはつまり…。
「…投降する、ということですか」
「あぁ」
「何故…」
てっきり…最後の一人になるまで抵抗するものだと。
それなのに…どうして。
「箱庭帝国は変わらなければならない。お前の思う通りだ…。憲兵局による悪政と、閉鎖された国家…。このままでは、箱庭帝国は衰退の一途を辿るだけだ。何処かで、現体制に終止符を打たなければならない…ずっと、そう思っていた」
「…まさか…」
諸悪の根元だと思っていた大将軍が…そんな風に考えていたなんて。
俺と同じ考えだ。
でも、もし彼がそう考えていたなら。
「それが分かっていたなら…どうしてそれを黙認していたんですか。あなたになら変えられたはずです。憲兵局を、内側から…!」
「それは無理だ。憲兵局の、俺以外の職員は…古い権益に執着している。でも…これは彼らが悪い訳ではない。生まれたときからずっと、この腐敗した国で、他人から搾取する以外の生き方を教えられなかった憐れな者達…」
「…!」
「変えられるとしたら、それは我々ではない…。外側から全てを一新してくれる、新しい風が必要だった。それがお前達革命軍だったのだ」
ディルク殿は…俺達のような存在が現れるのを、ずっと待っていた?
そんな…まさか。
「ありがとう。ここまで辿り着いて、この国を変えてくれて…。箱庭帝国の未来を、お前に託す。ルアリス」
「…ディルク殿」
憲兵局の大将軍が、そんなことを考えていたなんて…俺は知らなかった。
俺にとっては嬉しい誤算であるはずだった。セトナ様の父親と、戦わなくて良い。これ以上争う必要もなく、革命を終わらせられる。
全て、円満に解決出来る。
それなのに…どうして。
どうして…俺は今、こんな気持ちになるのだろう。
「…どんな大悪党が出てくるかと思ったら…随分と無責任ですね」
「!ルレイア殿…」
後ろから、ルレイア殿とルルシー殿が合流した。
正面入り口からこの部屋まで、敵はほぼいなかった。
彼らが辿り着けないはずがない。
ルレイア殿の一言は、言い方は悪いけど、俺の気持ちを全て表してくれるものだった。
「…ディルク殿…」
「セトナも…。よく帰ってきた」
「お父様…」
セトナ様にとっては…とても気まずい再会だろう。
「…本当に…よくここまで辿り着いた。今まで…こんなことが出来た者はいなかった。お前がそれをやり遂げるとはな…エーレンフェルトの息子。名前は確か…」
「…ルアリスです。ルアリス・ドール・エーレンフェルト」
「そう、ルアリスだ…。お前が、この国の英雄となる男だ」
…何だと?
俺は広々とした室内を警戒しながら、横目で周囲を見渡した。
護衛が室内を固めているとばかり思っていたが…。室内には、ディルク殿以外の人間は見当たらなかった。
そんなはずは…。護衛がいるはずなのだが。
何処かに潜んでいるのか…?
すると。
「そう警戒しなくて良い。この部屋には俺達以外誰もいない」
「…!?」
誰もいない、だって?
そんなはずは。
「人質も解放した。部隊にも武装解除を命じた…。戦争は終わりだ」
「どう…いう、ことですか」
この人は…一体、何を企んでいる?
人質を解放?武装解除?
「憲兵局は一切の主権を放棄する。俺の身柄も、『青薔薇解放戦線』に預けることにする」
「は…!?」
「出来ることなら…部下の命だけは助けてもらいたい…と言うのは、我が儘だろうか」
「…」
セトナ様も、ユーレイリーもミルミル達も…愕然として立ち尽くしていた。
俺は頭の中で、必死に現状を整理した。
この人は…憲兵局の大将軍。
その大将軍が、主権を放棄して身柄を預ける?
それはつまり…。
「…投降する、ということですか」
「あぁ」
「何故…」
てっきり…最後の一人になるまで抵抗するものだと。
それなのに…どうして。
「箱庭帝国は変わらなければならない。お前の思う通りだ…。憲兵局による悪政と、閉鎖された国家…。このままでは、箱庭帝国は衰退の一途を辿るだけだ。何処かで、現体制に終止符を打たなければならない…ずっと、そう思っていた」
「…まさか…」
諸悪の根元だと思っていた大将軍が…そんな風に考えていたなんて。
俺と同じ考えだ。
でも、もし彼がそう考えていたなら。
「それが分かっていたなら…どうしてそれを黙認していたんですか。あなたになら変えられたはずです。憲兵局を、内側から…!」
「それは無理だ。憲兵局の、俺以外の職員は…古い権益に執着している。でも…これは彼らが悪い訳ではない。生まれたときからずっと、この腐敗した国で、他人から搾取する以外の生き方を教えられなかった憐れな者達…」
「…!」
「変えられるとしたら、それは我々ではない…。外側から全てを一新してくれる、新しい風が必要だった。それがお前達革命軍だったのだ」
ディルク殿は…俺達のような存在が現れるのを、ずっと待っていた?
そんな…まさか。
「ありがとう。ここまで辿り着いて、この国を変えてくれて…。箱庭帝国の未来を、お前に託す。ルアリス」
「…ディルク殿」
憲兵局の大将軍が、そんなことを考えていたなんて…俺は知らなかった。
俺にとっては嬉しい誤算であるはずだった。セトナ様の父親と、戦わなくて良い。これ以上争う必要もなく、革命を終わらせられる。
全て、円満に解決出来る。
それなのに…どうして。
どうして…俺は今、こんな気持ちになるのだろう。
「…どんな大悪党が出てくるかと思ったら…随分と無責任ですね」
「!ルレイア殿…」
後ろから、ルレイア殿とルルシー殿が合流した。
正面入り口からこの部屋まで、敵はほぼいなかった。
彼らが辿り着けないはずがない。
ルレイア殿の一言は、言い方は悪いけど、俺の気持ちを全て表してくれるものだった。