The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…お前が、『青薔薇連合会』の首領か?」

ディルク殿は、ルレイア殿に向かってそう尋ねた。

そう聞きたくなる気持ちも、分からなくはないが…。

「残念ですね。俺は首領じゃない…。強いて言うなら…『青薔薇連合会』の死神、兼ルルシーの夫、といったところですね」

「誰が誰の夫だって?」

後ろのルルシー殿が、すかさず突っ込みを入れた。

…こんなときでもぶれないな。ルレイア殿は。

これがマフィアの貫禄というところだろうか。

『青薔薇連合会』の死神、は納得の異名だな。

「革命になんて興味はなかったんですけど…。あなた方が愚かにも、俺のルルシーを暗殺なんてしようとするから、こんなことになりましたよ。おめでとうございますね」

「…結局は、自分で自分の首を絞め続けていただけなのだろうな」

…その通りだ。

俺は覚悟を決め、拳銃を握り締めた。

「…あなたを拘束します、大将軍殿…。あなたには、この革命の責任を取って頂かなくてはなりません」

大将軍が悪人であろうと、善人であろうと。

彼のやったことは変わらない。

「あぁ…分かっている。全ては俺の責任だ。でも、部下達の命だけは…」

「あなた以外の人間には、責任は問わないつもりです。憎しみの連鎖を、次代に繋げない為にも…」

「そうか…良かった」

ディルク殿は、ほっとしたように笑った。

悪魔のように思っていたはずの、憲兵局の大将軍は。

結局、何の脅威にもならなかった。

本当に怖いのは、憲兵局による悪政を疑問に思わなくなった大衆と…そして、国民から搾取して当たり前だと思い込んでいる、多くの憲兵局員達だ。

こんな顛末に…なるなんて。

喜ぶべきなのに…俺は、素直に喜べなかった。

「…お父様」

セトナ様が、そっと囁くように呼んだ。

「セトナ…。それに、ルアリス」

憲兵局大将軍、ディルク・フォルカーティンは最後に、俺とセトナ様にこう言った。

「どうか…祖国に、平和を」

「…約束します」

…やっぱり無責任だ、と…ルレイア殿が小さく呟くのが聞こえた。

彼は基本的に、他人に厳しい。

でも。

ディルク殿は自分なりに…箱庭帝国を解放する為に、戦っていたのではないか。

ふと、俺はそう思った。
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