The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「えー、それじゃ定例報告…。国内の『青薔薇連合会』以外のマフィアに、大きな動きは特にありません。それから…箱庭帝国の革命で高騰していた銃火器の相場も、少しずつもとに戻ってきてるみたいですね」

今日は、週一の『青薔薇連合会』幹部会議の日。

帝国騎士団で言う、隊長会議のようなものだが…。

こちらの方は、随分とゆる~く開かれている。

それもこれも、首領であるアシュトーリアさんの方針だ。

アイズがいつも通り、真面目に報告してくれたのだが。

アシュトーリアさんは、にこにことこう答えただけだった。

「あら、そうなの~」

それだけ。まぁ、平和だからそれだけで充分ってことなのだろうけど。

「それは良かったわ~。それよりアイズ、レーズンサンド食べるでしょ?昨日お取り寄せしたものが届いたのよ」

定例報告よりも、レーズンサンドが優先とは。

そしてアイズも、こういうところはアシュトーリアさんの性分を受け継いでいるので。

「頂きましょう」

報告書を放置して、レーズンサンドに手を伸ばす。

「うめぇ。何これうめぇ」

「うん、美味しいわ」

アリューシャは口の端からぽろぽろ溢しながら、レーズンサンドを齧っていた。

更に、シュノさんも美味しそうにレーズンサンドをもぐもぐ。

「ルレイアも食べて」

「はーい」

軽くお返事して、レーズンサンドを口に運ぶ。

うん、美味しい。

会議中に堂々とお菓子食べられるって、良いものだなぁ。

しかし、ルルシーだけは。

「アシュトーリアさん…。幹部会議はお菓子タイムじゃありませんよ。ちゃんと会議を…」

真面目さんだなぁ、ルルシーは。

そんなところが大好き。

「まぁまぁ、良いじゃないのルルシー。革命のときは随分きな臭くて大変だったんだもの。今は皆でリラックスして楽しみましょうよ」

「…」

アシュトーリアさんに宥められ、ルルシーも口をつぐんだ。

「ほらほら、ルルシーもレーズンサンド食べて。美味しいわよ」

「…はぁ。ありがとうございます…」

渋々ながら、ルルシーもレーズンサンドを手に取った。

全く、いつも通り過ぎていとおしい。

「それにしても、本当に今回の革命は大変だったからね。このまましばらくは平和が続いてくれると良いね」

と、アイズ。

思えば、この言葉が既にフラグになっていたのかもしれないが…。

そのときの俺達は、知るよしもないので。

「そうですねぇ」

「本当ね~」

皆、呑気に構えていた。

とはいえ、俺達は本当に、呑気に構えて良かったはずなのだ。

この時点では、『青薔薇連合会』にはさしたる脅威などなかった。

箱庭帝国もアシスファルト帝国も安泰。帝国騎士団との関係も、良好とまでは言わないがお互い静観を決め込んでおり、均衡が保たれていた。

国内最大のマフィアである『青薔薇連合会』に、逆らう組織なんてそうそうあるものではないし。

余裕ぶっこいてても、問題ないはずだったのだ。

しかし。

この平和が、しばらく続くどころか、数時間後には見事に失われることになるとは…誰も予想していなかった。
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