The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルルシー

──────…ルレイア、アイズ、アリューシャが帰った後。

俺は、キッチンを片付けていた。

全く、あいつらと来たら…。何回も、もう何年も食費を払えと言ってるのに…。聞いた試しがない。

アシュトーリアさんに頼んで、奴らの給料から天引きにしてもらおうか。

それより…アリューシャだ。

今日はビーフシチューに赤ワインを入れてみたのだが、まさか、ビーフシチューの赤ワインであんなに酔っ払うとは。

元々酒に弱い男ではあるけども。

小学生でもビーフシチューじゃ酔わんぞ。

今度ビーフシチュー作るときは、アリューシャ用に別にお子様ランチ作っておこう。

あいつアホだから、喜んで食べるはずだ。

ビーフシチューの入っていた寸胴鍋を洗っていた、そのとき。

ダイニングテーブルに置きっぱなしにしていた携帯が鳴り出した。

「ん…?」

水道の蛇口を止め、手を拭いて、スマートフォンの画面を見る。

そこには、

「ルレイア…?」

ルレイアからの電話だ。

…何か忘れ物でもしたか?

いや、でも…何か忘れたとしても、あいつ毎日ここに来てるし…。わざわざ電話してくる必要はないはず。

じゃあ、別の用事か?

「…もしもし?ルレイア?」

通話に出るも、ルレイアの声は聞こえなかった。

…?

「ルレイア…?どうかしたか?」

再度声をかけるも、やはり無言。

普通なら、イタ電か、と思うところだが。

ルレイアがイタ電なんてする必要はないし、アリューシャと違ってビーフシチューで酔う奴じゃないから、酔っ払って間違えて、ってことでもない。

だから、すぐにピンと来た。

何か、あったのだ。

前々から示し合わせていた。

マフィアのあるあるみたいなものだ。自分の身に危険が迫っているかもしれないと思ったら、万一のときに備えて、仲間にそれを知らせる。

ルレイアは自分の身に何かが迫っていると察知して、通話ボタンを押したのだ。

その証拠に、通話口の向こうで、ナイフを擦り合わせるような戦闘音らしきものが、かすかに聞こえてきた。

…不味い。

ルレイアほどの手練れが、わざわざ俺にヘルプを求めてきたということは。

それだけ、厄介な相手だということだ。

俺は、泊まっていきたい、とねだったルレイアを冷たく追い返したことを、猛烈に後悔した。

だが、後悔している暇はない。

俺はすぐに外に駆け出した。

ルレイアを、助けに行かなくては。

携帯のGPSでルレイアの居場所を確かめた。

幸い、遠くには行っていない。でも…ルレイアの自宅への帰り道とは、大きく離れている。

やはり、ただ事ではない何かが起きたのだ。

「ルレイア…!」

待ってろ。すぐに行くから。
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