The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルルシー

──────…翌朝。

『青薔薇連合会』会議室では、昨日までの和やかな雰囲気とはかけ離れた、緊迫した空気が広がっていた。

「ルレイアが暗殺者に襲われた、ですって?」

「はい」

アシュトーリアさんはその知らせを聞いて、露骨に顔をしかめた。

「そんな、ルレイアが…!ルレイアは大丈夫なの?」

そして、シュノ。

ルレイアのことが好きなシュノは、酷く狼狽えていた。

「大丈夫。今は病院で治療中だけど…。幸い急所は外れてるし、彼のハーレム会員が40人くらい、病室に詰め寄せて看病してるそうだから」

…多いな。

むしろ邪魔だろ、それ。

まぁでも…だからこそ、俺もここにいるのだ。

もしルレイアが重傷で、生きるか死ぬか分からないとなれば、俺だってこんなに冷静ではいられない。

「マジかよ…!ルル公の後はルレ公って、何だよそれ。そうと知ってりゃ助けに行ったのに…!…ん?アリューシャそのとき何してたんだっけ?」

「君、酔っ払って寝てたよ」

「マジか!じゃあどっちにしても行けなかったわ」

…昨日の晩は、ただのお荷物みたいになってたよな、アリューシャ。

こんな冗談が言えるのも、ルレイアの命が無事だと分かっているからだ。

「私も…私も似たようなものだわ。ルレイアが傷ついてることも知らずに、アシュトーリアさんとご飯食べてたんだもの…」

シュノが、涙声で言った。

別に、シュノが悪い訳じゃない。

「シュノ…。お前のせいじゃない」

「でも、でもだって…。ルレイアが…」

ぐす、と涙ぐむシュノ。

…その気持ちはよく分かる。

俺の方が、十倍は重いけど。

「…」

俺は昨日の晩のことを酷く悔いていた。

泊まっていきたいとねだったルレイアを、突き返さずに泊まらせてやっていたら…こんなことには。

俺がみすみす…ルレイアを行かせてしまったから。

ぎり、と強く唇を噛み締めた。

「…ルルシー。君、自分のせいだと思ってるでしょう。それは違うよ」

俺の内心を見透かしたように、アイズが言った。

「どうやらルレイアを襲った犯人は、とんでもない手練れのようだからね。何日も前から計画していたんだろう」

「そうだよ!ルレ公『が』襲うんじゃないんだぞ?ルレ公『を』襲うんだぞ?そんな末恐ろしいことが出来る奴って、何だよ。最早化け物じゃねぇか」

…確かにな。

そんな末恐ろしいこと、俺だって考えつかない。

「ルレイアを襲った犯人って…誰なの?もう目星はついてる?」

と、アシュトーリアさん。

しかし…それは。

「…残念ながら、まだ。ただ…アリューシャの言う通り、ルレイアと渡り合えるほどの相手ですから…。只者ではないのは確かです」

この国に、そんな人間が何人いるんだ?と思うくらいだ。

考えられる選択肢としては…第一に。

「まさか…帝国騎士団?」

シュノが、俺の考えを代弁してくれた。

まぁ…最初に考えられるのは、それだな。

ルレイアと渡り合える相手と言ったら、オルタンス以下、帝国騎士団の隊長連達…。それも、四番隊より上の人間に限られる。

「だが…少なくともオルタンスが、そんなことをするとは思えない」

俺が帝国騎士団に人質になっていたとき。

あのときのオルタンスを見る限り…ルレイアを闇討ちしようとするなんて、そんなこと。

すると。

「…すげぇ。ルル公めっちゃ冷静で助かる。ルレ公だったら…この時点で絶対帝国騎士団ぶっ潰すマンになってたぞ」

「その点ルルシーは会話が成立するから良いよね。突然狂ったように笑い出さない辺りも、私達の心臓に優しい」

「…」

…俺が暗殺されかけたとき、ルレイア、そんなことになってたの?

それは…知りたくなかったな。
< 357 / 791 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop