The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
あのルレイアが、自分を襲ってきた人間に対して、容赦や情けをしてやるとは思えない。

仇討ちに来た女の子を洗脳して、自分の下僕に仕立てあげた男だぞ?

そのルレイアが何故、ルニキスを殺すなと言ったのか。

俺は、ずっとその答えが気になっていた。

「お前の…知り合いなのか?それともルニキスに…何か特別な事情が?」

「…」

ルレイアはしばし無言で、俺の顔をじーっと見つめた。

…何だ、その反応は。

もしかして、あまり言いたくないことなのか?

なら、無理には言わせたくないが…。

「もしかして…お前が、ルシファーだったときに…何か…」

「…好みだったんですよ」

「…は?」

ルレイアは、何故かちょっと照れながら言った。

「顔が…好みだったんですよ」

「…」

「だから殺したくないなぁって。…てへっ」

「…」

俺は無言で手を振り上げ、ルレイアの頭をべしっ、とはたいた。

「いたぁ!ルルシー!俺怪我人!怪我人なんですよ!」

あぁ、ごめん。お前が怪我人だってこと忘れてたわ。

帰って、アリューシャに謝っておこう。

まさか本当にそんな理由だったとは。

「ふざけるなルレイア。好みだから殺すなって、何だそれは」

「だぁって…。殺すには惜しいな~と思って。幸い俺に殺意がある訳じゃないみたいですし…。あ、大丈夫ですよ。一番は変わらずルルシーですから」

そんな心配はしてない。

「それにほら…真面目な話、彼には何か事情があるみたいですし」

「…あの夜、何か話したのか?」

「なぁんにも。でも顔見たら分かりますよ」

…だから、殺すな、と言った訳か。

全く…安心して良いんだか、悪いんだか…。

とにかくルレイアが目を覚ましたことに関しては安心した。

「…だから殺さないでくださいね。俺は是非、あのイケメンとお話がしたい」

「…どうやら、向こうもそのつもりで出頭してきたそうだ」

「あ、やっぱり」

やっぱりじゃねぇよ。

「…それじゃルレイア、あいつの正体はまだ、聞いてないんだな?」

「聞いてないですね。何者なんですか?」

「…アイズが調べてくれたところによると…『セント・ニュクス』っていうマフィアのリーダーだそうだ」

「…ふーん…」

ルレイアは『セント・ニュクス』を知っているのだろうか?

「聞いたことがあるか?」

「ある気はしますけど、そんなに大きな組織じゃないですよね」

そうだな。

『青薔薇連合会』とは、比べ物にならないレベルだ。

「名前は…ルニキス。ルニキス・エリステラだって」

「ルニキス…?本名なんですかねぇ。いかにも俺達の仲間になりそうな名前してますが」

あ?

お前、自分好みの顔の人間には優しいよな。

「今すぐにでもお喋りしたいですねぇ」

「…今すぐは駄目だぞ。もう少し傷が良くなったらだ」

「え~?ルルシー、俺に内緒でルニキスのことぺろっと食べたりしません?」

「しないよ。お前じゃないんだから」

「良かったぁ。彼は俺が先約済みなんですよ。もうキスもしましたし」

「あっそ」

………………え?

お前、何やってんの?

「仕方ない。じゃあ俺は早いとこ回復するように…寝ますね。お休みなさい」

「え?あ、うん…。お休み…」

…ルレイアが、目を覚ましたのは良いものの。

なんだかとても怪しいことになっている気がするのは…俺の気のせいなのか…?
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