The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「あの」ルレイアが暗殺者に襲われたと聞いて、帝国騎士団の隊長連の反応は様々だった。

「ルレイア殿が…。無事なのか?」

「一応…無事らしいです」

何の因果か、一番に連絡を受けたらしいルーシッドは、渋い顔で答えた。

こいつも何かとルレイアに因縁があるよな。

出来ればそのまま死んでくれても良かったのに、とか思っていそうだが。

俺としては、あいつにはまだ生きていてもらわないと困る。

後味が悪いからな。

無事と聞いて、とりあえず安心した。

俺以上に、ルシェはほっとしたような顔をしていた。

あいつにしてみれば、ルレイアが生きていてくれるだけで満足なんだろう。

さて…安心したのは良いものの。

「…何処の命知らずだ?ルレイアを襲うなんて…」

ルレイア「が」襲うんじゃないんだぞ。

ルレイア「を」襲うんだ。

俺だって嫌だぞ。あんな、拳で一回殴ったら金槌で一万回殴り返してくるような人間を襲うなんて。

死ぬに決まってるだろ。

「詳細はまだ不明ですが…」

「…まぁ、色んなところに恨みを買ってるだろうからな…」

奴に恨みを抱く者は多いだろう。だから道端で刺されたとしたって、ちっともおかしくはない。

刺せたら、の話だがな。

それが出来たら誰も苦労してねぇよ。

「ひとまず…今は『青薔薇連合会』の息がかかった病院に入院しているそうです」

「ふーん…」

ルレイアを襲ったのが誰かは知らないが。

気の毒な。100回殺されるくらいで済めば良いが。

「…いっそ息の根を止めてしまえば、話が早かったものを」

昔からルレイア…ルシファーのことが大嫌いだった五番隊のアストラエアは、吐き捨てるようにそう言った。

ルレイアがいなくなれば…『青薔薇連合会』は今よりずっと扱いやすくなるだろう。

だからアストラエアの気持ちが、全く分からない…訳ではない。

でも。

そんな後味の悪い顛末…俺は御免だ。

それじゃ、間接的に俺達が殺したようなもんじゃねぇか。

あいつが冤罪吹っ掛けられてたことに、俺達が気づかなかったせいで…あいつはあちら側に堕ちてしまったのだから。

「…ん?」

そこで俺は、オルタンスが難しい顔で考え込んでいることに気づいた。

「…」

…よし。無視をしよう。

ここでいちいち突っ込みを入れるから、おかしなことになる。

こいつに喋らせるべきではない。

何かを察したのか、六番隊のリーヴァも、オルタンスの異変に気づきながらも必死に目を逸らしていた。

賢明な判断だ。このまま無視していようぜ。

しかし、空気を読まない九番隊のユリギウスが、愚かにもオルタンスに声をかけてしまった。

「オルタンス殿?何を考えているのです」

「…」

きっとオルタンスのことだから、何か重要なことを…。今後の『青薔薇連合会』との関係について、考え直しているのだと。

あるいは、ルレイアを襲った人物について考えているものだと。ユリギウスはそう思ったのだろうが。

有り得ない。

何故ならこの男は、ルレイアのこととなると、途端にアホになるからだ。

そして、案の定。

喋らなければ良いものを、問い掛けられて、オルタンスはこう答えた。

「…いや…。お見舞いの品は、何が良いかと思ってな」

「…は?」

ユリギウス含め、俺以外の全員がぽかんとしていた。
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