The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
…俺は、そんなことだろうと思っていたから狼狽えなかった。

そういう奴だよ。こいつは。

「出来れば直接行って渡したいが、入れてくれないだろうから…。せめて何か送ろう。何が良いだろうか」

「…」

ルーシッドが、「え、冗談ですよね…?」みたいな顔で、俺を見つめた。

更にリーヴァが、「何か言ってやってくれないか…」と、俺を見つめた。

二人して俺に頼るな。

だが仕方がない。この場で、俺以上にオルタンスにはっきり意見出来る者はいない。

…結局こうなるのかよ。

「…オルタンス。お前まさか…ルレイアに花束でも送りたいって言うんじゃないだろうな?」

「ルレイアは何の花が好きなんだろう…。青い薔薇が良いのか?」

「青い薔薇なんてそうそうねぇよ」

本当に送るつもりかよ。馬鹿なんじゃねぇの。いつも思うけど。

そういやホワイトデーも何か送ってたしな。やっぱり馬鹿だったわ。

「そうか…。じゃあ、赤にしよう」

「気持ち悪っ…。何で赤なんだよ」

「赤じゃ駄目なのか?」

駄目に決まってるだろうが。

「そ、その…。オルタンス殿、本気でルレイア・ティシェリーに見舞いの品を送るつもりで…?」

ルーシッドが、震え声で尋ねた。そう、お前が聞けよ。俺じゃなくてさ。

「…?何かおかしいか?」

「…」

男がきょとん、と首を傾げるな。気持ち悪い。

あぁ…。もう頭が痛い。

「…ふん。鉢植えの彼岸花でも送ってやれば良い。下らん」

アストラエアは冷たくそう吐き捨てた。

馬鹿馬鹿しい、と思っているのだろうな。俺も思う。

しかし、オルタンスはアホなので、

「鉢植えの花は入院患者に送ってはいけないんだぞ。失礼だからな…。よし、じゃあピンクの薔薇の花束を送ろう」

皮肉言われてんだよ。気付け。

ってか、何でピンク?

青も駄目、赤も駄目ならピンクって?

「…」

オルタンスを止めてくれ、みたいな目で俺を見る、帝国騎士団隊長連。

知るか。自分で止めやがれ。

とりあえず、放っておくことにする。
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