The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
そして、翌月。




フューニャが箱庭帝国に発つ日の朝、俺はフューニャを車に乗せて、空港まで送っていった。

搭乗時間まではまだ余裕があったので、俺達は待合室で待つことにした。

するとフューニャは、昨日までもう何度も何度も言ったことを、再度念押しした。

「良いですかルヴィアさん。お野菜もちゃんと食べないと駄目ですよ。夜更かしも駄目です。ペットボトルの回収日は、第二と第四木曜日ですからね。忘れたらいけませんよ」

「うん…」

「それと、お腹出して寝ないように。洗濯するときは、洗剤と柔軟剤を忘れないでくださいよ。あと洗ったシャツはアイロンがけをして畳むんですよ。アイロンは寝室の戸棚の二段目にありますからね」

「…はい…」

…小学生か?俺は。

家事に関しては全然信用されてないのが丸分かりだな。

結婚してからというもの、家のことはほぼ全てフューニャに任せっきりだったもんな…。

そのツケが、今回ってきた。

「俺のことは大丈夫だから…。そんなに心配しなくても…」

「いいえ、とても心配です。私がいないと飢えて餓死するんじゃないかって、とても心配です」

そこまで?

そこまで信用ない?俺。

俺だって良い大人なんだから、自分のことくらい自分で何とかしますよ。

「そ、それより…。フューニャも気を付けろよ。解放されたとはいえ、箱庭帝国は…まだルティス帝国ほど治安が良くないんだから」

「はい」

フューニャは、心得ているという風に頷いた。

でも、やっぱり心配だな。

フューニャが俺を心配するのと同じように、俺もフューニャのことが心配だ。

いざってとき、すぐ助けに行ってやれないからな。

「…帰ってくるときは、連絡してくれよ。俺か、俺が行けなかったら部下を迎えに寄越すから」

「はい。分かりました」

職権濫用だが、お許し頂きたい。

「…」

「…?どうした?フューニャ」

フューニャは、じーっと俺のことを見つめていた。

…その目は何?

顔に何かついてる?

するとフューニャは、とんでもないことを言った。

「…ルヴィアさん。私がいないからって、浮気しないでくださいね」

「ぶふっ」

俺は思わず噴き出してしまった。

フューニャ、お前の思考回路はルレイアさんと同じか。

「ルヴィアさんはさぞやモテるでしょうけど、でも自分が既婚者だということを忘れないでくださいよ」

「いや…モテないし…。フューニャ以外にモテたくもないし…」

「浮気は駄目ですよ。怒りますよ、そんなことをしたら」

「しないよ…。この世の何処を探しても、フューニャ以上の女の子はいないよ」

俺は、ルレイアさんではないから。

自分の嫁以外の女性と、関係を持つ気はない。

男に生まれてきたけれど、俺は100人の女性より、たった一人愛する女性がいればそれで良い。

それ以外は要らない。

「…良い子良い子してください」

フューニャは、俺にぽふ、と抱きつきてそうせがんだ。

「良い子、良い子」

フューニャの髪を優しく撫でてやると、フューニャは満足そうに目を細めた。

あー可愛い。

やっぱり浮気は良いや。こんなに可愛い子がいるのに、他の誰かにうつつを抜かせるほど、俺は器用じゃない。

「…気を付けて行っておいで、フューニャ」

「はい。行ってきます」

最後に俺はフューニャに、いつもの行ってきますのキスをした。

ただいまのキスが出来るのは、また来月。

それまでは、お預けだ。
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