The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
何時間も飛行機に乗って、ようやく降り立ったときには、既に時刻は夕方になっていた。

ルティス帝国帝都の空港と比べたら、箱庭帝国の空港は慎ましいものだった。

祖国がどうなっているか、私はとても気になっていた。

私の記憶にある箱庭帝国は、皆いつも何かに追い詰められて、悲壮な顔をして、国全体にどんよりとした絶望と諦めが広がっていた。

思い出しただけで胸が苦しくなった。

入国審査は滞りなく済んだ。ただし、私は箱庭帝国の人間としてこの国に帰ってきた訳ではない。

ルティス帝国の人間として、この国に遊びに来たに過ぎない。

それだけは、忘れてはいけない。私は最早、箱庭帝国の人間を名乗ることは出来ないのだ。

でも、後悔はしていなかった。

大きなスーツケースを引き摺りながら、私は辺りを見渡した。

ミルミルが、迎えに来てくれるということだったが…。

「フューシャ」

「あ…ミルミル」

とん、と肩を叩かれて振り向くと、そこにミルミルがいた。

…彼女に会うのは、ルティス帝国で別れて以来だ。

「よく帰ってきてくれたな、フューシャ。歓迎するぞ」

「…ミルミル…」

良かった。ミルミル…本当に無事だったんだ。

手紙をくれた時点で彼女が生きていることは分かっていたけど、やはり実際に目の前にすると、感慨深いものが込み上げてきた。

「ミルミル、良かった…。無事で…」

「おいおい、泣くでない。久々の再会だというのに」

「だって…私…。ごめんなさい…」

「謝るのもやめじゃ。泣いている暇などないぞ。早く帰らねば、妾の家に着く頃には日が暮れてしまうわ」

ミルミルは私の背中をとんとんと叩き、そう言って笑った。

昔と変わらない、いつものミルミルだ。

それを再確認して、私はまた泣きそうになってしまった。

でも、ミルミルの言う通り。ここで泣き崩れる訳にはいかない。

なんとか涙を引っ込めて、私はミルミルと一緒に空港を出た。

「ミルミルの家までは…どうやって帰るの?」

「『青薔薇委員会』の公用車を待たせてある」

「『青薔薇委員会』…?」

と、いうのは何だ?

「聞いておらなんだか。憲兵局に変わる、新たな政府機関じゃ。委員長はセトナ様、委員長補佐にルアリスが就いておる」

「そうなの…」

憲兵局に変わる新しい政府。

そんなものが出来ていたなんて。

「無論、憲兵局の二の舞にはならぬ。詳しく話すと長くなるが…そうじゃな、憲兵局とは何もかも正反対。そう言えば分かるか?」

「えぇ」

革命軍の皆が、新しい国を作っているのだから。

この国かどんな風に変わっていっているのか、想像するのは容易い。

ミルミルの自宅に向かう途中、私は車窓から外の景色を食い入るように眺めた。

ミルミルも、そんな私に話しかけずにそっとしておいてくれた。

私はこの目で、この国を見たかった。

道には、普通に人が歩いていた。

男の人と女の人が仲良くお喋りしながら歩いているのも見た。

彼らの着ている服は、あの身の毛もよだつような国民服ではなかった。

皆、自由に好きな服を着ていた。

街のあちこちに新しい建物が建てられていて、食料品を売っているお店もあった。

どれもこれも、以前の箱庭帝国では有り得ない光景だった。

…本当に、変わったんだなぁ。

私はそれを実感して、また涙が溢れそうになった。
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