The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルヴィア

─────…ルルシーさんは、ああ言ったものの。

俺はやはり心配であった。

フューニャが浮気するかも、とは思っていない。

帰ってきてくれるかが心配だった。

…フューニャにとって、この里帰りは単なる旅行ではない。

数年ぶりに生まれ故郷に戻って、自分のルーツに触れて…やっぱり故郷の方が良い、と思ったとしても…何ら不思議ではなかった。

そりゃそうだよな。ルティス帝国なんて、フューニャにとっては…故郷にいられないから、仕方なく逃げてきた亡命国に過ぎない。

俺のことだってそう。夫とはいえ、俺は所詮…たかだか数年の付き合いの、血縁関係もない赤の他人。

おまけに生まれ故郷も違う。

それがどうだ。フューニャは自分の生まれた国に帰り、同じくそこで生まれ育った仲間達と再会し…俺との間にはない、子供の頃の思い出話に花を咲かせ、お互いの絆を再確認していることだろう。

…ルティス帝国に、戻りたいと思うだろうか?

箱庭帝国のことなんてほとんど知らない、他人の俺のところに戻りたいだろうか。

やっぱりこのまま箱庭帝国にいたいなぁ、と思うんじゃないだろうか。

フューニャに故郷を見せてやりたい一心で、俺は彼女を快く箱庭帝国に送り出したけど。

…今頃、やめておけば良かったかな、なんて利己的な後悔をしている。

女々しい男だな…俺は。

フューニャが本当に帰ってきてくれるのか心配で、俺は最近、ろくに食べてもいないし眠ってもいなかった。

家の中は散らかり放題。ペットボトルどころか普通の燃えるゴミですら、出すのを忘れて玄関先に山積みである。

我ながらだらしないとは思うけど…フューニャが帰ってくるのか心配で、他のことは考えられなかった。

…情けない。

挙げ句、気分が悪くて帰ってきてしまった。

あぁ…フューニャ。

彼女は、今頃…何をしてるんだろうなぁ。

ゴミだらけの自宅リビングで、家主に反して元気にカサカサと床を這う黒い虫を、じーっと目で追いながら。

俺はぼんやりと頬杖をついていた。

すると。

「…ん…?」

テーブルの上に放置していた携帯が鳴り出した。

誰だろう…ルルシーさんかな?

俺のこと…心配してくれてるみたいだったし。

誰かと話すような気分じゃなかったが、上司からの連絡なら、無視する訳にはいかない。

仕方なく、俺は手を伸ばして携帯を掴んだ。

「…えっ!?」

画面に映し出された名前を見て、俺は驚愕に目を見開いた。
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