The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

俺は財布と携帯と鍵だけを持って、家から飛び出した。

そのまま車に乗り込んで、猛スピードで走り出した。

二、三回信号無視したような気がするし、一度は道路を横断していた野良猫を轢きかけた。

どうにかこうにか目的地に辿り着き、乱暴に運転席の扉を閉めて、駆け出した。

飛行機が離着陸する音が、酷く耳障りだった。

そう、飛行機。

一本の電話を受けて、俺がやって来たのは、空港であった。

言われた通り、南口の柱の影に、見慣れた女の子が待っていた。

「…フューニャ！」

「あら、ルヴィアさん…。早かったですね」

フューニャは、驚いたように顔を上げた。

…フューニャだ。

本当に、本当にフューニャだ。

…帰ってきたんだ。俺のフューニャが。

「自分で帰ろうと思ったんですけど…スーツケースが重くて。お仕事中に呼んでしまってごめんなさい」

「フューニャ…！」

仕事中に呼んだとか、そんなこと、どうでも良い。

フューニャがいる。俺のフューニャが、ちゃんと帰ってきた。

それ以上に嬉しいことが、他にあるだろうか。

俺は思わず、フューニャを抱き締めた。

人が見ているなんて関係ない。フューニャが帰ってきてくれたのだから。

「ルヴィアさん…！どうしたんですか」

「済まん、だって…フューニャ…。もう帰ってこないかと…」

情けないことに、ちょっと涙声になっていた。

「そんなこと心配してたんですか？全く…。困った人ですね。私が帰ってこない訳ないじゃないですか。ここが…私の居場所なんですから」

「…！」

俺は、なんと愚かだったことだろう。

フューニャが帰ってこないかもなんて、少しでも疑うとは。

「ほら、泣かないでください。みっともないですよ」

「うぅ…ごめん…」

ぐしぐし、と瞼を手で拭った。

「フューニャ…帰ってきてくれて、本当に良かった」

「馬鹿ですね、あなたは…。私はちゃんと帰ってきますよ」

「…うん」

疑った、俺が馬鹿だった。

「…お帰り、フューニャ」

「えぇ。ただいま」

悩んでいた自分が、アホらしく思えてくる。

俺はフューニャの髪を撫でた。

その柔らかな感触に、また泣いてしまいそうになった。