The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
帰りのドライブは、行きとは打って変わって平和そのものだった。

「…そういえば、フューニャ。予定では明後日くらいに帰ってくるんじゃなかったか?」

帰ってきてくれたのは嬉しいのだが。

帰ってくる予定は、もう少し先ではなかったか?

「少し早まったんです。今日を逃してしまうと、明日から箱庭帝国は天候が荒れて、しばらく飛行機が飛ばなくなってしまうだろうって、ルアリスが」

「成程…」

そういうことだったか。

「予告なしに帰ってきてしまって、ごめんなさい」

「いや…構わないよ」

むしろ有り難い。

あと二日も帰ってこなかったら、俺は心配し過ぎで胃に穴が開いていた可能性がある。

フューニャ…帰ってきてくれて、本当に良かったなぁ。

今日早退したのも結果オーライだった。

ほくほくしながら一緒に帰宅し、自宅の鍵を開けて中に入る。

やっぱりこの家にはフューニャがいなくては…と。

扉を開けた瞬間に、俺は現実に帰った。

…あ。

玄関先には、捨て忘れて城壁のようになったゴミの山。

そのゴミ山の下から、最近ではすっかり我が家の住人になってしまった例の黒い虫が、出迎えに来ましたとばかりにひょっこりと顔を覗かせた。

やべっ…と思ってフューニャを振り返ると、フューニャは真顔で俺の横を通り過ぎ、止める間もなくずんずんと進んでしまった。

「ちょっ…まっ…」

この数週間、俺はフューニャが帰ってくるか心配で、他のことに手がつかなかった。

あれだけ偉そうに、家のことは心配するな、と大口叩いてフューニャを送り出したというのに。

フューニャを追って家に入ると、そこには悲惨な光景が広がっていた。

…昨日までは、全然気にならなかった。

でも今では、これがいかにやばい状況か…痛いほどによく分かる。

リビングの床は、ゴミやら脱いだ服やらに埋め尽くされて、すっかり足の踏み場もなくなっているし。

フューニャの城であったキッチンは、何日前のものかも分からない、洗われていないカップ麺とコンビニ弁当の容器が山積み。

その上をハエが数匹、俺を嘲笑うようにぶんぶん飛び回っていた。

そこのペットボトルのお茶なんて、中の液体が変色してしまっている。

荒れ果ててしまった我が家を、フューニャは真顔でじっと見つめていた。

…これは、不味い。

今更になって、危機感に襲われた。

「あ、あの…。フューニャ、これは…その…あの…」

「…」

その無言が怖い。

「…済みませんでした」

ここは謝罪だ。言い訳の前に、まず謝罪。

俺はゴミだらけの床に膝をつき、誠心誠意謝罪した。

「…『家のことは大丈夫だから心配するな』。そうおっしゃってませんでした?」

フューニャの声は、凍りつくほどに冷たかった。

「…言いました」

「『フューニャが来るまでは一人暮らししてたんだから』とかも言ってましたね」

「…はい」

言いました。今となっては夢の中の出来事のようだけど。

確かに言いました。

「その結果が、この有り様ですか」

「…誠に申し訳ありませんでした」

自分の情けなさに、涙が出そう。

フューニャに鉄拳制裁を加えられても、文句は言えなかった。

しかし。

「…はぁ。まぁ、今回は許してあげましょう」

「…えっ?」

フューニャさん、あなた…今、何て?
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