The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
こんなとき、いつもだったらどうなるか。

正座させられた上で、五時間くらい説教は堅い。

いや、それだけで済めばまだまし。

家の中をこんなにしたのだ。寝ている間に何かの儀式の生け贄にされるか、悪魔か何かが憑いているに違いありません、と洗濯機で回される可能性もある。

フューニャはやる。この子はそういう子だ。

そのフューニャが。

…今回は許してあげましょう、だって?

あれ…?幻聴かな?

「ふ…フューニャ…さん?」

「何です」

フューニャは手始めに、新聞紙を丸めて振り上げた。

俺をぶん殴るのかと思ったら、フューニャがぶん殴ったのは、俺の昨日までの同居人。

さっき俺達を出迎えてくれた、黒光りする例の虫であった。

「…怒らないのか?」

「あら。怒って欲しかったですか?」

「いや、そんなことは…」

怒られないのなら…そりゃ怒られない方が良いに決まってる。

でも…。

…怒られると思ってたものが怒られないと、なんだか拍子抜けしてしまう。

「…何で?」

何で、許してくれる気になったんだ?

「だって…。ルヴィアさん、私がいないのが寂しくて、こうなったんでしょう?」

「…それは」

その通りである。全ては、フューニャがいないことが寂しくて、無気力になっていたことが原因。

「だから許してあげます。随分痩せたみたいですし…」

「…」

…俺、そんなに痩せたかな。

ちらり、と鏡を見る。これは誰だ?と思うくらいやつれていた。

ちょっとびっくりした。

俺、いつの間にこんなになってたんだ。

そういや、最後にまともに何か食べたのって…一週間以上前だった気が。

「だから今回は、特別に許してあげます。ただし…お掃除、ちゃんと手伝ってくださいよ」

「フューニャ…!ありがとう」

「全く…あなたという人は、私がいないとダメダメなんですから」

フューニャがいないとダメダメ。全くその通り。

「さぁ、ぼーっとしてないで、ゴミ袋持ってきてください。燃えるゴミと燃えないゴミは別々に分けるんですよ」

「あぁ…!」

フューニャに急かされ、俺は飼い主に「取ってこい」された犬のように、喜んでゴミ袋を取りに行った。

フューニャが戻ってきてくれて、本当に良かった。

さっきまで屍のようになっていたのが、夢のようだ。
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