The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
だからこそ、分からないのだ。

ルリシヤが『セント・ニュクス』をけしかけたとして。

彼が、何故そんなことをしたのか。

『セント・ニュクス』程度のマフィア、俺達なら簡単に潰せる、なんて…分からないルリシヤではなかろう。

潰されることが分かっていて、戦争仕掛けてくる馬鹿はいない。

たまにそんな馬鹿もいるけど、でもルリシヤは馬鹿ではない。

馬鹿とは程遠い人間だ。

考えなしに、こんなことをするとは思えない。

…考えられるのは、二つの可能性。

一つ目は、『セント・ニュクス』程度のマフィアでも、『青薔薇連合会』に対して勝機を見込める、何か特別な策がある。

これは充分有り得るな。ルリシヤは俺と同じで、頭が良いから。

何か強力な後ろ楯があるとか…あるいは、俺が帝国騎士団に対してそうしたように、一瞬にして相手を黙らせることの出来る特別な切り札があるとか。

これらがあれば、『セント・ニュクス』でも充分俺達の脅威になり得る。

それから、二つ目の可能性。

俺は、こっちじゃないかと思っているのだが。

…そもそも、ルリシヤはこの件に絡んでいないのではないだろうか。

『セント・ニュクス』の宣戦布告は、ルリシヤの預かり知らぬところで起きたこと。

すなわち…ルリシヤは、関係ないのだ。

もしこちらの可能性だった場合…ルルシーが今こうやって、激おこになっているのは…甚だしく筋違い、ってことになる。

ルリシヤがこの件に関係ないのなら、ルリシヤを拷問して締め上げたって無駄。

でも…この様子を見ると。

全く無関係…って訳でもなさそうだな。

とにかく、真相が分からない以上…ここで俺達がいくら唾を飛ばし合っていたって、意味がない。

「…ルリシヤ。話してくれませんかね。あなたは何を知っているんですか」

「…」

「俺はあなたが犯人じゃないと思っています。…信じさせてくださいよ。あなたが俺達を、仲間だと…家族だと、少しでも思ってくれているのなら」

「…ルレイア」

俺は、ルリシヤの目を真っ直ぐに見てそう言った。

ルリシヤもまた、俺の目を真っ直ぐに見返した。

「これ以上だんまりされちゃうと、こちらとしても何もしない訳にはいきませんよ?」

やりたくはないけどさ。

拷問とか、色々やらなくちゃいけなくなる。

何なら特別に、ベッドの上で行う「ルレイア流」の拷問をやる必要があるかもしれない。

やりたくないんだよ?本当に。

家族相手にそんなことは出来ない。俺は真っ当な大人だからな。

本当にやりたくないんだからな?

「どうです。今、この場で素直に全部話します?それとも…ルルシーの言う通り、喋りたくなるようにしてみます?」

どうぞ、お好きな方を選ぶと良い。

喋りたくなるようにしようと思っても、拷問が通じる相手とも思えないけどな。

「…そうだな。もう…限界だな」

ルリシヤは、ぽつりとそう呟いた。

…限界、ねぇ。

「隠し遠そうと思っていた…。隠し通したまま、幹部の権力を使って、全部俺の中だけで終わらせようと思っていた…。でも、出来なかった」

「ふぅん…?」

「…だから、話そう。ルレイア…俺が何故、お前を暗殺しようとしたのかも」

…どうやら、話す気になってくれたようだな。

「長くなるかもしれないが…良いか?」

「構いませんよ。どうぞゆっくり話してください」

「…あんまり長いと、アリューシャ、眠くなりそうだな…」

「はしっこでこっそり寝てて良いよ、アリューシャ」

ぼそぼそ、と喋ってるアリューシャとアイズは、ちょっと脇に置いておいて。

聞いてあげようじゃないか。ルリシヤの一世一代の告白を。






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