The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…何から、話すべきなんだろうな」

ルリシヤの、その憂鬱そうな顔を見たところ。

楽しい話ではないのだろうな。

人様の事情なんて、あんまり楽しいものでないことの方が多いけど。

「愉快な話ではないが…まず、俺の出自から話すことにしよう。…ルレイア」

「はい?」

「お前にとっては、不愉快な話だと思う」

「…そうですか」

その一言で、もう何となく分かっちゃった。

「…俺は、ルレイアと同じ…貴族の生まれだ」

「…」

ルリシヤは、心底嫌そうな顔で吐き捨てた。

…うーん、成程。

それは確かに、嫌な話だなぁ。

俺はある程度予測していたから驚かなかったが、アリューシャとシュノさん、それからルルシーは目を見開いていた。

アシュトーリアさんとアイズも顔色が変わらなかったから、二人も予測していたんだろうなぁ。

何と言うか…立ち居振る舞いで何となく分かるんだよ。

俺も、同類だったからね。

「…ルレイア、大丈夫か?」

ルルシーが、心配そうに俺に声をかけた。

思い出したくもない、忌まわしい過去を彷彿させるから…心配になったのだろう。

だが、その気遣いは不要だ。

「大丈夫ですよ」

俺が貴族だったのは、もう十年も前のことだ。

とっくに過去のこととして割り切っている。

「…それなら良いけど、無理はするなよ」

「分かってますって」

先程まで激おこルルシー丸だったのが嘘みたいに優しいんだから。全く。

「それで、あなたは何処の貴族だったんですか?良ければ家名を教えて頂けませんか」

大抵の貴族なら、名前を知っているつもりなのだが。

「…クレマティスだ。聞いたことはあるか?」

「あぁ…聞き覚えありますよ」

確か、中流貴族の一つだったよな。

ウィスタリア家ほどではないが、そこそこ有力だったはず。

しかもクレマティス家と言えば、ウィスタリア家と同じで…。

「…帝国騎士を輩出する貴族でしたよね」

「…あぁ、そうだ」

成程ね。ルリシヤが化け物じみて強い訳が、ようやく分かった。

ルリシヤは、俺と同じなのだ。

俺と同じで…帝国騎士を輩出する貴族の家に生まれ、幼い頃から帝国騎士になる為に英才教育を受けてきたのだ。

それなのに、彼は今ここにいる。

つまり、俺と同じく…道を違えたのだ。

何処までも、俺と同じ道を辿って、ここにいるらしい。
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