The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
俺もまた、兄と同じように幼い頃から英才教育を受けた。

父は最初、俺のことを兄のスペアとしてしか見ていなかった。

けれども、段々…弟の俺の方が遥かに優秀であることに気がついた。

俺は、自分で言うのはおこがましいが…兄よりずっと、才能があった。

間違いなく、俺は父の才能を継いでいた。

いや…それ以上かもしれない。

俺はクレマティス家に突然変異で生まれた天才だった。自分自身としては、全く自覚がなかったが…。

父は、兄なんかより弟の方が余程将来有望であるということに気づいた。

そして、それに気づいてからというもの…父が兄に話しかけることはなくなった。

というのも、俺に才能があることに気づいた丁度同時期…兄は、帝国騎士官学校の入学試験に落ちた。

帝国騎士官学校は、ルティス帝国最難関の学校なのだ。

「ちょっと勉強が出来る」とか、「ちょっと剣術が出来る」程度では、到底入学することは出来ない。

生まれながらの才能と、たゆみない努力の結果、ようやく何とか入ることが出来る学校だ。

兄のような凡人が、受かるはずがなかった。

帝国騎士官学校どころか、滑り止めのつもりで受けた国内で二番目に優秀な学校も、三番目の学校も落ちた。

身の丈に合わない学校しか受けていなかった兄は、受験した全ての騎士官学校で不合格だった。

考え得る限り、最悪の受験である。

兄は酷く落ち込んだが、それ以上に落胆したのは父だった。

そこに、どうやら弟である俺の方が優秀だ、と家庭教師から教えられた。

あれだけ兄に期待を寄せていたのに、父は一瞬にして兄を見限った。

兄を見捨てて、代わりに弟の俺に期待を寄せるようになった。

あの頃俺はまだ自我が芽生えたばかりの幼子だったが、その時点で既に、幼い頃の兄とは比べ物にならないくらい非凡な才能を持っていた。

父は喜んで、俺に自分の跡を継がせると言い出した。

そしてその日から、父と周囲の期待は俺だけに向けられることになった。
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