The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルリシヤ

──────…兄に追い出されたとき、俺はまだ13歳そこそこだった。

よくもまぁそんな子供を家から追放したものだと思うが、追い出された俺は、しかし行き倒れになってしまうことはなかった。

俺に同情した親戚の手引きで、俺は児童養護施設…所謂孤児院に入ることになった。

天下の帝国騎士官学校合格者が孤児院行きなんて、どんな転落人生だ。

とはいえ、俺は父に命じられて帝国騎士を目指していたのであって、自分から望んで帝国騎士官学校を受験した訳ではなかった。

それに、あそこまで兄との仲が拗れた以上、これまで通りクレマティス家で暮らすことなど出来なかった。

だから、これで良かったのだ。

俺にとっては得体も知れない孤児院に向かう車中で、俺は自分にそう言い聞かせていた。

そして初めて辿り着いた孤児院を見て、さすがの俺も閉口した。

それまで貴族として暮らしてきた人間が、いきなり孤児院暮らしとなると、そりゃカルチャーショックも受ける。

俺が住んでいた孤児院は、比較的環境の良い部類に属していたが…それでも、孤児院であることに変わりはない。

しかもこういう孤児院は、ほとんどが定員オーバーと相場が決まっている。

子供の数に職員の数が見合っておらず、当然子供達は職員の目の行き届かないところでやりたい放題だった。

子供達は孤児院の中で勉強することが義務付けられていたけど、職員不足のせいでまともに教えられる教師もいなかった。

そんなものだから、子供達もろくに勉強しない。

俺より年上なのに、自分の名前すら書けない子供もいたくらいだ。

おまけに、勉強しないだけでなく、躾もまともにされていないから、孤児院の子供達は野生児も同然。

すぐ暴れて窓やら椅子やらぶち壊すわ、下らないことで取っ組み合いの喧嘩をするわ、卑猥な言葉や乱暴な言葉が飛び交ってるわ。モラルも糞もなかった。

五歳くらいの子供でさえ平気でエロ本読んでるんだから、孤児院がどれだけ無秩序な場所だったかは言うまでもない。

そんなところにいきなり放り込まれた俺は、環境に適応するのに本当に苦労した。

でも、帰りたいとは思わなかった。

クレマティス家には帰りたくなんてなかった。俺は、指差して高笑いする兄の変わり果てた姿が忘れられなかったから。

結局のところ、俺はあの孤児院以外に行く場所はなかったのだ。

幸い俺は、他の子供達より遥かに良い教育を受けている。学歴はないけど勉強はそこそこ出来るし、剣術もそれなりに出来る。

孤児院を卒業したら、すぐ働こう。

帝国騎士団に入るつもりはなかった。父には悪いけど、俺は元々帝国騎士になりたかった訳じゃないし、何より帝国騎士団には兄がいる。

貴族権を剥奪されても、帝国騎士団には入れる。

でも、また兄と顔を合わせるのは御免だった。

まぁ、俺は人並みには学もあるし、選ばなければ仕事も出来るだろう。

そんな風に、軽く考えていた。

そして。




…グリーシュと出会ったのは、孤児院に入って三ヶ月ほどたった頃だった。




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