The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
その日、孤児院では部屋替えがあった。

これは珍しいことではなかった。

孤児院は人の出入りが激しかったので、しょっちゅう部屋が替わっていた。

今日から何号室のベッドを使ってね、と職員に指示され、俺は言われた通り荷物をまとめ、部屋を移動した。

荷物と言っても大した荷物はない。孤児院では、個人の持ち物なんてほとんど持てないから。

荷造りなんて、小さな鞄一つで充分だった。

まぁ、荷物が少ないと部屋替えも楽だから、良いんだけど。

言われた通り部屋を出て、指示された部屋に入る。

そこも前の部屋と変わらず、ベッドがすし詰め状態だった。

部屋の広さとベッドの数が見合ってないんだ。この孤児院は。

室内を見渡し、隅っこの二段ベッドの下段が、シーツも剥がされて裸になっていることに気づいた。

あぁ、あそこか。

今日からこのベッドで寝ることになるらしい。

俺は空いたベッドに荷物を置き、腰を下ろした。

新入りが入ってきたというのに、ルームメイトは知らん顔で自分達のことに集中していた。

その孤児院では、カードが流行っていた。賭け事は禁じられていたが、皆隠れて金銭や菓子等を賭けていた。

俺も誘われたが、やったことはない。

正直、あまり興味がないのだ。

新しい部屋でも、ルームメイト達はカード遊びに夢中だった。何を賭けているのか知らないが。

見たところルームメイトは俺より年下だ。多分、十歳かそこら。

十歳の子供が賭け事に興じるとは。世も末だな。

俺はルームメイトがカード遊びをするのを、ぼんやりと眺めていた。

すると。

「よっ。お前、新顔か?」

「…」

ひょいっ、と。

いきなり視界の中に飛び込んできたのは、上段のベッドの少年だった。

上段から身を乗り出し、身体を逆さまにして、下段に座っていた俺を覗き込んでいた。
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