The previous night of the world revolution3〜L.D.〜

sideルレイア

──────…俺は、思わず舌打ちを漏らした。

こんな面倒臭い女がいるなんて、聞いてないぞ。

これで、ルルシーとの結婚がまた遠退いた。

最悪、あと数年は無理じゃないか。

何してくれるんだ。

顔が俺の好みのタイプなのは否定しないがな。これでこんな面倒臭いバックグラウンドがなければ、早速ハーレムに入れて遊んでいたところだったが。

生憎俺は、羊の振りをした狼を飼うつもりはないからな。

「…何のことでしょう」

狼は、この期に及んで惚けてみせた。

「惚けても無駄ですよ。あなたが…箱庭帝国の人間だってことは分かってますからね」

「…」

懐かしいカセイ・リーシュエンタールは、愚かにもここで俺に拳銃を向けてきたものだが。

彼女は、非常に冷静だった。

図星を突かれたにも関わらず、顔色の一つも変えなかった。

…なかなかやるな。

思えば『シュレディンガーの猫』は、滅んで当然の組織だったのだ。あんな無能がスパイをやっていたんだから。

それに比べて、こっちの女は…カセイよりずっと骨がある。

しかし、それだけに厄介だということだ。

どうやらこの女と、その裏にある組織は…『シュレディンガーの猫』よりも、遥かに扱いづらいらしい。

…ちっ。

「…箱庭帝国なのか。ルレイア」

ルルシーが、俺にそう尋ねた。

「何か厄介な組織に与しているのはすぐに分かったが…敢えて箱庭帝国だと断言する根拠は?」

「だって他にないじゃないですか。俺達にとって現状厄介になりうる組織は、国内にはない」

あの忌々しい帝国騎士団は別にしてな。

「ということは国外です。アシスファルト帝国で何かあれば、シャリヤから俺に連絡が入るでしょうし…」

でも、そんな連絡はないし。

それ以外の諸外国で、ルティス帝国に、しかも『青薔薇連合会』に手を伸ばしてくるような組織の存在は、考えられない。

ならば、考えられるのは。

「箱庭帝国以外に有り得ないんですよ。そうでしょう?」

「…ふふ」

名探偵ルレイアが、これほどの名推理を披露してあげたというのに。

彼女は、にやりと口許を歪ませて笑った。

そう。笑いやがったのである。
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